タイトルズoss
ぼっとん☆トイレ
私は食べる事が好きだ。
そんな私は軟弱な胃腸なので、ロシアンルーレット的な寮の食事は中々に応えるものが、ね。
うちの学校は今をときめく農業専門学校。
寮の食材はまさしく自給自足、みんなが育てた野菜だの牛だの豚だの卵だの、とても新鮮なものをみんなで有り難く調理する。
だけど、みんながみんな口に合うかどうかは別の話だよね。
卒業まで胃腸も心も耐えられそうになかった所に先輩からシェアハウスの話を貰ってハラハラドキドキの食事とおさらばする事にした。
「ここだよ。今日から宜しくね」
これ普段着だよ、と言いながらもシフォンのワンピースにハードな靴を合わせた、女子力の高そうな先輩が案内してくれたのは築30年は余裕で超えてそうな昔なつかしの一軒家。
はめ込みガラスの木の引き戸って、なんかものすごく久しぶりに見た気がする。
「うふふ、見て驚いた?」
可愛らしく笑う先輩。
「でもねえ、驚くのはここからだよ」
鼻歌でも歌いだしそうな機嫌の良さで鍵を開けて来て来て、と手招きされた。
今日から住むとはいえ、ここはお邪魔しますなのかな。
「お邪魔します?」
「ここに住むのにお邪魔しますってヘンなの」
ころころ笑う先輩は玄関の壁向こう木の扉を開けた。
「じゃーん!」
そこにあったのは、トイレと植木鉢。
前者は家の古さからしてこの仕様のトイレは何の不思議もないです、先輩。煙突モドキもあったし。
「あれ? 反応薄いなあ」
どっちに反応したらいいんだろ。
「……わー、ぼっとんトイレだー」
棒読みなのは許してほしいな。
「そこじゃないんだけど」
まさかのダメだし。
「もー。エコプラントに注目してほしかったの!」
「そこですか」
「うん。研究課題にしたの。実益を兼ねてるでしょ。あのね、エコプラントってね」
目を輝かせてエコプラントが如何にスバラシイ植物で興味深いものなのかを滔々と語りだした先輩。
同居人は思いのほかとても研究熱心な人のよう。
どうなる、新生活?