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おもかぴえろ
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novelistID. 46843
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タイトルズoss

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腕枕



 寝起きに腕が痺れるのは腕枕をしたから。
 そんな事を忘れそうになっていた頃、恋人が出来てあれよあれよと結婚した。
 そりゃもうね。
 嬉しいわけですよ、僕としましては。
 決まる時には決まるとは良く言ったものだと、ええ。
 慰めの様に聞かされながらも半ば諦めていただけに嬉しさは一入ですよ。
 腕の一本や二本の痺れが何だと言うんだ。
 嬉しい悲鳴ってやつだ。
 そんなことを思って悦に入っていましたらね?
 聞こえちゃったんだなぁ。
 僕と妻の共通の友人の女性が遊びに来てくれたときの話なんですけどね。
 ちょうど僕がお花摘みから戻ろうとしたタイミングでしてね。
 盗み聞きみたいで後ろめたいなあ、なんて思ったんですけどね。
「自分用マッサージチェア、買ったの?」
 赤い、ちょこんとしたマッサージチェアなんです。
 妻は生理痛が酷いですからねえ。
 マッサージチェアで緩和されるならお安い買い物です。
「うん。さすがに腰痛いー」
「あらあら。ご馳走様?」
 オジサン、新婚さんにはまけませんよ、頑張りますよ。
「違うわよ。旦那の足のせいよ」
 足?
「足?」
 可笑しそうに聞き返す友人に妻は真剣な声で答えたんですよ。
「彼ね、腕枕して寝入ると抱き枕にするのよ。寝てると寝返りを打ちたくなるでしょ? お好みの向きがあるらしくてね、寝返り打つとコロコロ転がされて元に戻されるの。ちょうど腰の位置に足が乗っかっちゃってねー。どうにも辛いのよね」
「あぁ、意外と重いものね、足って」
 わかるわ~、と友人。
「こっそり床で寝てたりするんだけど、寝てるはずなのに足で探してるのよ。抱き枕作戦もダメだったし」
「こわっ」
「それ見た時、諦めたわよ」
「お疲れ様」
 なんてことだろうか。
 僕が安眠してる時によもや妻がそんな寝苦しい事になって居たなんて。
 しかし寝ているし、なんとも出来ないじゃないか。
「なんと言うか……腕枕の弊害よねえ」
「うん。でも嫌いじゃないからいいんだ」
「あーあー、ご馳走様」
 このタイミングで入るのは不自然だってわかってるけど、つい入っちゃった。
「元気な子は生まれたかい?」
 ニヤニヤ笑って友人。
 そうだよな、それくらいの時間経ってるものな。
「お蔭様で元気に旅に出ましたよ」
「そうよかった。さてそろそろ行ってみようかね」
 何を思ったのか「がーんばーってねー」と言い残した友人は元気良く帰っていった。

「……僕は何を頑張ればいいのかな?」
「さぁ? 寝相とか?」
 見送った僕たちがそんな事を話してるとはきっと彼女は思っていないだろうが、立ち聞きをしていた事はばれていたようで。
 実に恐ろしい哉、女性の洞察力ですよ。
 その後、僕の寝相がマシになったかどうかは妻のみが知る事実です、多分。

作品名:タイトルズoss 作家名:おもかぴえろ