タイトルズoss
タバコは吸い始めが旨くて短くなると不味い
煙をぷかああああと吐き出しながら話題を探す。
ファミレスで向かい合うこと二十分。
久しぶりに会った友人を前にして話題が尽きるのが早くないか、私。
まあ、延々お姑さんの愚痴だの旦那の愚痴だの子供の話されたって困るんだけどさ。
あーあ、スマホ弄り出したよ、こいつ。
愚痴聞いてほしいんならママ友にでもすりゃいいのにね。
あーでもあれも結構複雑な人間関係らしいから言いたくても言えないんだろうけど。
「煙草ってさあ。吸い始めは美味いのにフィルターに近づくと共に不味くなるよね」
「は? なにいきなり」
「いやなんとなく?」
なにそれ、と友人は小さく笑った。
「それさ。味が濃くなるんじゃないの?」
「そうなのかな」
「そうだと思うけど。どうなんだろうね」
そう言って彼女は神妙な顔をしてフィルターを咥えた。
恐らく検証するのだろう。
私は友人のそう言うくだらない事に乗ってくれるところが好きだ。
うーん、三分の一じゃまだわからんなー、と呟いてる。
そんな彼女を見ていたら何だが取り付く島のないのは私なのか? と思えてくる。
ショートホープの三分の一って普通の煙草の半分くらいだと思うんだけどな。
と前置きをして少し水を向けてみる。
「最近仲良くやってんの?」
誰とは言わない。
彼女は目で、ん? と返事をよこした。
「そーうねぇ。あんたが思ってるよりは仲良しなんじゃないかしら」
「そう。平和で何よりだわ」
and you? やたら発音良く友人は問い返して来た。
「何で英語」
「チビの英会話に付き合ったら嫌でも口から出るわ。で?」
そう言えば最近じゃ小学校で英語を教えてるってニュースで聞いた気がする。
勉強に付き合うお母さんも大変だな、とぼんやり思った。
「こっちも。なに一つ変わった事ないわよ」
「はっきりしない男はお断りなんじゃないの?」
少しからかいを見せた友人に渋面を見せる。
「長い付き合いだと分からなくなることもありますよ」
「あらそ」
結婚を意識しないわけじゃない。
付かず離れずで楽だな、と思うのは本人たちだけで。
周りはそうは思ってくれてないのだと友人の目が語る。
「ま、したからいいってもんじゃないけどね」
随分、力がこもった一言だった。
「お待たせしましたー」
間延びした店員の声に話を遮られ、とりあえずオーダーしたものに意識を向ける。
「そうそう。さっきのね、やっぱ味が濃くなってる気がしたわ」
検証結果の報告を律儀にしてくれる友人にとりあえず食べようよ、と声を掛けた。