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おもかぴえろ
おもかぴえろ
novelistID. 46843
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タイトルズ

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煮る



「椿タンに美味しいものでも食わせてやってくんろ」
 そう言って鱒を頂戴した。
 河童から。
 私の雇い主は色んな名前をお持ちで、古今東西の不思議なものに好かれている、不思議な人だ。
 ただ、名前の時系列から何時頃からの知り合いなのか察する事が出来、この河童は随分古い知り合いのようだ。
「嬢ちゃんが世話してるって寺の小僧から聞いておらぁ安心しただ。椿タンは執着がねぇからな」
 死んじまったらよ、椿タンは椿タンじゃなくなるでよ。それはさすがに寂しいでな。
 なんだか物事の真理として重要な事を言ってる気がするけれど、別に私は真理の探求者じゃないのでスルーする事にして、そんな事よりも私には気にかかる重要な事があるのだ。
 河童に河童と呼びかけるのは日本人に日本人と呼びかけるのと同じ行為ではなかろうか。
 たとえば「河童さん」だと「日本人さん」と言った具合で、自分がそう呼ばれたら居心地ゲージが最速で下がりそうだ。
 呼びかけに困って、あのぅ、と言葉にしてみた。
「シミジミなさってるところ大変申し訳ないんですけども。この鱒はいつ獲られたものです?」
「んなのオメー、今朝に決まってら」
「そうですか。ありがとうございます」
「いいってことよ。しかしそのままで食えねえって人間てなあ不便だな」
 ええ、デリケートな生き物なので。
 天然の川魚。
 とても貴重だけれど生で食べるには些か抵抗がある。
 おろしてから水煮にするのも良し、塩焼きもよさそうだ。
 お蔭様で料理の腕は上がりました。

作品名:タイトルズ 作家名:おもかぴえろ