タイトルズ
本
梅雨が明けると昔の人は虫干しをしたのだそうな。
ついでに大掃除もしたんではないかと俄か家政婦の私は思う。
そして現在私は本をぱらぱら捲りながら虫干しに付いて悩んでいる。
書籍の扱いとしては日焼けは避けたいところだけれど、蔵書の量が半端ないので一気に並べてみる、とか。
そして日がな一日、読みもしないでページを繰っていくと言うのは煩悩を振り払うための修行なのか、と思えてくるに違いない。
アキさんは結構な読書家だけれど、そこに文字があって読めさえすればいいというアバウトな人で、だからと言って結果的に本を劣化させていい理由にはならない。
そもそもの発端は書庫の掃除をしたときに少々湿気た臭いがし、書庫臭いますね、と話したら虫干しでもしましょうかね、と雇い主が言った事による。
あのアキさんが!
自身の栄養失調とかそんなものとんと構いもしなかった、あの! アキさんが! 自発的に何かをしようとしている!!
驚いて思わず妙厳寺に電話をかけてしまったほどだ。
私以上の驚きを見せたのは住職で、槍でも降ってくるんじゃないか? とかなり本気の声で言われた。
それはいいとして現実問題として蔵書が千を越えている場合、どうやったら一気に虫干しを終えることが出来るのかとても悩ましい。
堅牢な作りの部屋は書庫の他にはなく、少しずつやって他の部屋に一時置いたとして今度は床が抜けないかハラハラしなくてはいけない。
家事を一切担っている身としては本に付きっ切りともいかない。
今、珍しく協力的なアキさんは数冊の本を手に縁側で虫干し兼ねて読書中で。
困ったなあ。
一人二人の手で追いつける量じゃない。
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