タイトルズ
小さな
不思議な雇い主のところには不思議なお客人がやってくる。
今日やってきたのは小さな小さなお爺さんだった。
玄関の掃き掃除をしていたらどこからともなく声がして。
「これ娘っこ」
この家に娘っこと呼ばれて該当する性別は私しかいないので振り返って見たけど誰もいなくて、気にしたらだめな類かなあ、なんて思った。
「これ、どこを見ておる。ここじゃここ!」
もう一回振り返ったけどやっぱりわからなくて。
靴下を引っ張られてやっとわかったって言う。
と言うか、いつの間にそこにいたんですか、危うく踏んでしまいますよ、お爺さん。
「娘っこ、わしをきゃつのところに連れてけ」
お爺さん、見上げるどころじゃないですよね、その体勢。
そっくり返りすぎてひっくり返っちゃうんじゃないかしら。
お年寄りにそんな事されても心臓に悪いのでしゃがんでみた。
それでもお爺さんが私を見上げてるのに変わりはないけど。
「きゃつって、アキさんですか?」
こくこく頷くおじいさんを両手に掬ってアキさんの元へ。
「お客様です」
「アラ、お珍しい。どうしたんです?」
「おう、ちっとな」
私を見て、お嬢さん、お茶お願い。そう言ってアキさんはお爺さんと話し込んでしまい。
まあ、それはともかく私は食器棚にある小さな小さな食器は何のためにあるのかと常々思っていたけれど今日謎が解けたのでした。
後に聞いた話によると、あのお爺さんは山をいくつも越えてアキさんを尋ねるのにものすごい年月を使っているとの事で、ようようの思いで玄関に辿り着いたら私を見つけたとの事だった。
なんだろう、適切なコメントが出てこないのは私が未熟だからだろうか? と思わず自省してしまった次第である。