タイトルズ
いま
家族がいなくなったら、一家団欒と言うものはなくなるものだ。
当然だけど。
無駄に広い家で一人で過ごすというものは慣れるものなのだろうか。
爺様がいて、婆様がいて、父さんがいて、母さんがいて、弟がいて、テレビの番組に茶々を入れて過ごす日々を送っている私にはこれまた当然だけど想像が出来ない。
ぼんやりしていたら弟が声をかけてきた。
「姉ちゃん、恋煩い?」
最近この弟はこうやって姉をからかう。
「んー? キミは最近色気付いた事しか言わないね」
「お年頃ですから」
春を満喫してるらしい彼は見るもの全てに春色かかっているのだろう。
平和でいい事だ。
「ねえ、広い家で一人で過ごすのってさ、寂しくないのかな」
「姉ちゃんさー。無駄に目がいいんだから見たらいいじゃない」
寂しいとかそう言うのを勝手に思い込んで同情するとか、相手に失礼じゃね?
呆れた声音にハッとする。
「ま、俺は寂しいけどね。誰かが死ぬのに順番なんてないんだろうけど出来ればうちの家族には順番に逝ってほしいわ」
そうしたら生涯独身だとしても慣れそうじゃね? と弟は笑う。
「そうだね」
全ての事に達観している節のある雇い主はきっとそれこそ達観しているのだろう。
余計な詮索はするものじゃない。
言外に告げる弟を見上げて誇らしく思った。
「なによ」
「いやぁ、あんたがそんな事言うなんてね。ねーちゃん涙ちょちょ切れそうよ」
うわぁ、バカにして、と嫌そうな顔をする弟の頭を撫で繰り回した。