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架空植物園

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風歌い草



強い風には背を向けて
かすかな風は胸に受け止め
程よい風を吸い込むんだ
風歌い草

風を送り出すんだ
音を鳴らそう風の歌だ
皆それぞれに自分の音を出せ
風歌い草

短い春を謳歌しよう
蜂がくる 蝶がやってくる
刻々と変わる歌を聴かせよう
風歌い草



1974.4.29 風見山





【風歌い草】……そんな言葉が今は亡き父の日記から見つけるとは思ってもいなかった。父は気まぐれに日記をつけていたようで、いや日記というには纏まりがない。遺品の整理中に何気なく読み始めたとき、おう! こんな素晴らしい詩を書いていたのかと思ったら、誰かの詩を書き写していただけだった。自分の創作と気に入った他人が書いたものとを区別せずに書いてある。作者名を書いてあったり無かったりなので判断は難しい。たまたまオレが知っている詩や歌詞もあって、ああ書き写しただけかと分かったのもある。

だから、この【風歌い草】は誰かの作品かも知れないと思った。しかしネット検索をしてもそんな草の名は出てこなかった。それに場所が父の生家近くの山であることと、日付が入っているので父が実際に見たものである可能性が大きい。父は顔に似合わずロマンチックな所もあったので、【風歌い草】は父が勝手につけた名前だろう。

風見山は子供の頃に父と一緒に登った記憶がある。標高約800m、休みながら歩けば頂上まで行けるだろう。これは行って確かめて見る価値があるとオレは決心した。

作品名:架空植物園 作家名:伊達梁川