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残雪の山並

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 最後に高速バスの予約をすることにした。バスは新宿から出ていた。恐ろしく低料金だが、ネット予約だとクレジット決済ということになる。西沢はクレジットカードを持っていないのでバス会社に電話してみた。
 平日なので予約は少ないらしく、どの席でも指定できると云う。愛想良くそう云った若い女性は、こちらもいい感じだ。
「前の方の左側の窓際をお願いします」
「往復とも同じ席でよろしいでしょうか」
「はい。そうしてください」
 それにしても高速バスは安いと、西沢は感心した。新宿から松本までほぼ五千円で往復できるなんて、ちょっと信じられないような話だと思う。電車の料金は片道でもその金額を遥かに超えるのだ。
「電話番号をお願いします。明日の朝、バスターミナルでその番号を云って乗車券を受け取ってください」
「わかりました。ありがとうございました」
 明日の今頃は安曇野でサイクリングと決まった。いよいよ残雪の北アルプスとご対面することができると思うと、急に目の前が明るくなったような気がする。今までの人生は暗く、明日からは最高の人生が始まる。そんな錯覚に西沢の心は躍った。
作品名:残雪の山並 作家名:マナーモード