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残雪の山並

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 今度こそ。
 長野地方気象台発表の天気予報は明日、明後日とも晴天を予言している。降水確率は時間帯によってゼロから二十パーセントまでの範囲となっている。
 次に「駅スパート」で電車賃を調べた。松本までは七千円程だ。松本から白馬までは千円ちょっと。往復だと一万七千円前後だが、宿泊費や飲食代を含むと三万円前後は必要になる。時間短縮のために新幹線を利用した場合は、更に六千円余りの上乗せとなる。先日見たツアーの広告にあった参加料金がやけに高いと思ったが、実はそうでもないことに漸く気付いた。
 いずれにしろ、給料日までの半月の生活が心細いものとなりそうだ。友人から車を借りて行くという手も考えたが、ガソリン代と高速道路の通行料金を考えると大した違いはなさそうだった。
そうだ、あの手がある。
 西沢はりさからのメールを思い出した。
 半年程前のこと、山村りさからのメールに、彼女の住む大阪まで逢いに来てほしいという内容のものがあった。それに対して行きたいと、返信メールで西沢は伝えた。だが、飛行機でも新幹線でも、移動のための費用が高額になるので諦めるしかないと、結局彼は伝えた。じゃあ、高速バスで来て、というのがりさの主張だった。
晩秋の或る冷え込んだ朝、高速バスターミナルへ向かおうとする彼の携帯電話に、りさからのメールが着信した。
「ごめんなさい。急に主人の出張先へ同行することになりました」
「ねえ、今日お墓参りに行くから、一緒に行ってくれる?」
 どきっとした。そのメールを読んでいた西沢の背後から声をかけたのは、別居中の妻だった。
作品名:残雪の山並 作家名:マナーモード