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心の病に挑みます。

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「げ、なんで?大好きなラーメンが今の僕の身体に悪いのはわかるけど、野菜たっぷりの焼きそばもあかんの?」
「麺類は、炭水化物だから、あなたは取りすぎたらだめなのよ。」
「夏にそうめんも食べられないのかな?」
「そんな食事ばっかりだったから、病気にもなるし、太るのよ。だめ。絶対だめ。」
「そ、そんなあ・・・」
「缶コーヒーもだめだよ。砂糖いっぱいあるんだから。砂糖入れるならラカントを少しよ。」
「わかりましたよ。」
「あなたには、栄養療法の第一人者の溝田先生のカウンセリングを受けてほしいの」
「どこにあるの?」
「東京・新宿にあるわ」
「遠い!」
雄志は、嘉穂からそういわれるも当初は、あまり気乗りがしなかったが、数週間たち、なんとなく東京見学でもいってみようかという気持ちになっていた。
2010年5月10日、雄志は、朝早くから一人新幹線にのり、東京へと向かった。採血をするので、前日の晩九時から絶食しないといけないので、新幹線では飲まず食わずでいくしかなかった。
「帰りこそは、おいしい弁当を堪能するぞ!」と心で思いながら、メールなどしているうちに、東京に着いた。
東京から乗り換えて新宿へ行くと、ビルがたくさんある。駅周辺にはおしゃれな店がたくさんあり、
「大企業に勤めてたらこんなおしゃれな店でランチができるんだろうな」
とうらやましく思いながら、横を通り過ぎていった。
迷いながらもやがて溝田クリニックについた。ビルの6階にあがると、なかは涼しげな待合室である。
窓からは外の景色もみれる。
「こんにちは」
雄志は、受付で手続きを済ますと椅子に座り、本を読み始めた。
「大和さんどうぞ」、少しして呼ばれた。
「はじめまして、大和さん。」
その日の担当は溝田先生ではなく、別の女医だった。
「よろしくお願いします。」
「いま、何に一番困っていますか?」
「そうですね、不眠と脂肪肝ですね。」
雄志は、この脂肪肝への改善法に困っていた。
少し、話はさかのぼるが、二年前に雄志が職場の健康診断を受けたとき、“肝機能障害の疑い”と診断されたのだが、結果を受けただけで、どうしたらよくなるのかわからなかったのだ。
ともかく、専門医にみてもらおうと、肝臓専門の先生に診てもらった。食事の改善と運動をするよう勧められ、肝機能を改善する薬をもらったものの、雄志は長くは続かなかった。どうしたらよいのか、一般的な改善法でなく、もっと具体的な内容まで踏み込んだ治療法を知りたかった。
その後、今の職場で健康診断を受けたところ、やはり“肝機能障害”との結果がでた。雄志は、どうやって治したらいいのか困ってしまった。
やがて、嘉穂が栄養療法について、インターネットや本で一生懸命に調べてくれ、溝田クリニックの存在を知ったのだった。
「炭水化物は、あなたはたべたらだめ」
と宣告されてから雄志は、ごはん、パン、麺類、粉もんを控えるようになった。
いっとき、食事をしても飢えたような飢餓感があり、麺を食べたい衝動にかられることもあったが、水を飲んだり、卵を食べたりして、なんとか耐えることができた。
大好きな麺類が食べれない代わりに肉・卵を多めにとるのだが、これは問題ないのだ。溝田クリニックで診てくれた瀬戸口先生は
「これは糖尿病の人の血糖値の上がり方です。ごはんをたべると、急激に血糖値があがり、それを下げるために、内臓がインスリンをとりこみます。そして、こんどは一気に血糖値がさがり、精神症状となって、現れる人もいます。血糖値が下がりすぎると、パニック障害がおきる人もいます」
と説明してくれた。
「縄文時代のようにお米がない時代でも、人は、肉や魚だけで生活できたんです。炭水化物がなくても、たんぱく質がとれていれば、それで大丈夫なんです。」
雄志は、納得できた。
栄養指導のつぎに採血が終わると、雄志は、東京駅で高級海鮮弁当を買って、新幹線のなかで、ごはんをのぞいて食べるのであった。
二週間後、採血のレポートが届いた。ALTの値とコリンエステラーゼの値が高い。雄志は、溝田先生の電話カウンセリングを受けた。
「大和さんは、空腹時の血糖の値が高いです。これは、空腹時に、緊張したり、イライラそわそわしたり、筋肉が緊張している状態になっていると思います。」
「まったくそうなんです!」
「そして、食事をとったあと、血糖値がぐんとあがり、それを抑えるために、インスリンが人の五倍でていることをさしています。それは、やがて脂肪へと変わり、内臓についてしまいます。」
「それは、糖尿病のことなんですか?」
「かなり近いものがありますね。」
「それを改善する道はあるんですか?」
「大和さんにとって、一番大事なことは、血糖値をあげないということです。」
「血糖値をあげないためにどうすればいいんですか?」
「ゆっくりと食べることです。これだけで血糖値の上昇がだいぶ抑えられます。そして、次に食べる順番です。まず繊維質の野菜をとります。そして次に、たんぱく質・肉・魚・卵をたべます。最後にごはんを少したべます。この順番を守ってください。」
「ゆっくりと食べることなんですね。私は、先生の本を読んで、いまは炭水化物をとらずに、たんぱく質中心の食事をしています。朝は卵と野菜、昼は春雨ヌードル、夜は肉が中心で、ときどき、プロテインをとっていますが、これでよくなりますか?」
「すばらしいですね!大丈夫です。必ずよくなりますよ。」
「ところで先生、サプリメントについての質問ですが、私の場合、ビタミンが大事ということなんでしょうか?」
「ビタミンとナイアシンがとくに重要です。」
「亜鉛はどういう効果がありますか?」
「インスリンの過剰な分泌を抑える働きがあります。」
「先生、サプリメントはどれぐらいの期間飲む必要があるんでしょうか?」
「人にもよりますが、約5ヶ月ぐらいです。」
「ちなみに尿が近いのは何が原因でしょうか?」
「おそらく、緊張状態にあることが原因と思われます。」
溝田先生の的確な答えに雄志は、長年疑問に思っていたことがすーっと解決していくのを感じた。
「わかりました。やはり、インスリンの過剰分泌も脂肪肝も緊張・そわそわ感もすべてつながっているんですね。それを改善するために大事なことは“ゆっくりとたべる”“野菜からたべる”“炭水化物を控える”ことなんですね。大変よくわかりました!」
「また何か疑問に思ったことはいつでも聞いてください。」
「ありがとうございました!」
雄志は、これで、病気は治るかもしれないと希望をもてた。統合失調症からくる肥満を治すためには、どんな努力をして、どう頑張ったらいいのか、これでほぼ明快になったのである。精神的に“頑張らない”ことは大事であるが、“好き勝手に生きればいい”という意味ではない。体質改善のために“ゆっくりたべること”を努力し、炭水化物を控えることに“頑張る”のである。精神科医・栄養療法の専門家が言っている治療法なのだ。雄志は、統合失調症歴10年にして、栄養療法を知ることになる。


当事者PSWの可能性

雄志は、花塚とともに京都のとある大学でも講演の依頼を頂き、新たな視点で感想を語った。
「スタッフと利用者と両方を経験して感じたことは?」
作品名:心の病に挑みます。 作家名:大和雄志