幽霊青年と赤マフラー
『で、今日は何処に行くの?』
クリスマス当日、あ日曲がり角で会った時と同じように赤いマフラーを身に付けている彼女に問いかける
「今日は町外れの丘よ」
『…丘?』
「お墓参り、ってやつよ」
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電車に乗って20分、人気は無いが比較的綺麗な郊外へと辿り着いた
海沿いなのか潮の香りと鳥の鳴き声しか感じられない
よく来ているのか、道に迷うそぶりも見せずコンクリートで固められた道を淡々と進んでいく
「ここはね、よく彼氏が連れてきてくれた町なの
偶々通っただけらしいんだけど、静かだし落ち着く場所だって」
『都会の中にこんな自然の残ってる場所なんてあったんだね』
「都会っていってもド田舎だけどね
彼はこの道を通るたびにくだらない話ばかりしてきたの」
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『学校の帰り道に真っ白な猫がいてさ、
柚葉ちゃん好きだったっけって思って
連れて帰ろうと手を伸ばしたんだ
そしたら、僕の腕と頭を踏み台にして
塀の上を上って何処かに行っちゃったんだ』
「それは残念ね
…後、私が好きなのは黒猫だから」
『そ、そうだっけ!?』
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「一年前の今日も、ここに来る予定だったの
駅で待ち合わせして、電車に乗る前に私の行きたかったお店に寄った」
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「私、あそこに行く前に【Crazy Alice】に寄りたい」
『…【狂ったアリス】?
何その危ない名前のお店』
「少し古めの雑貨屋さん」
『別にいいけど…』
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「角を曲がって信号を渡って、お店の前まで来た」
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『もしかして…此処?』
「そうよ」
『いやいや、なに此処?
物凄い陰湿的な雰囲気なんだけど』
「中は普通よ
さ、入りましょ」
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「お店の扉に手を描けようとした時______」
『…トラックが、突っ込んでき、た?』
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『柚葉ちゃん!!!!』
「え?…!!」
凍った路面でスリップしたのか、トラックが僕らの方に向かって凄い勢いで駆けてくる
僕は彼女の腕を引っ張り、安全な方へと突き飛ばした
彼女が地面につく瞬間、トラックは僕を捲き込んで店内に突っ込んだ
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何処か他人行儀だが、丘につく頃には全てを思い出した
「此処が貴方のお墓
貴方が一番好きだった場所にたてて貰ったの」
海と青空を背景に丘の上に1つ、新しいお墓がたっていた
お墓に刻まれている文字は
『結城 海月』________
作品名:幽霊青年と赤マフラー 作家名:渚 奏