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放課後シリーズ

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「弓道部って、チョロイんですね?」
 思わず本音が口をつく。「しまった」と杉浦は口を歪めたが、その上級生は、
「そうそう、チョロイのよ」
と気にする風でもなく笑った。
 予定したところは見学し終わった。後は終わりのHRまですることもない。どうせどこかで暇つぶしをするつもりだったから、弓道部の見学でそれをしたって同じことだ。
「森野、おまえも支度しろよ」
 学食の方から袴姿の二人が歩いてきた。そのすぐ後ろには見るからに新入生が一人、付いてきている。杉浦と目が合った。どうやら彼も、弓道部の演武とやらを見に行くらしい。彼の前を歩いていた上級生が杉浦に目を止めた。
「入部希望者」
 森野と言う先ほどの弓道部員が、杉浦を指差して得意げに言う。
「見に行くだけッスよ」
 杉浦は速攻で否定した。森野はニヤリと笑い、「そうそう、暇つぶしの見学希望者」と訂正した。
「二人は俺が案内するから、おまえ達は着替えてこいよ」
 三人の袴姿のうち、一番年上だと思われる部員に促されて、森野と眼鏡をかけた上級生は彼にぺこりと頭を下げ、長机の後ろから奥へ延びる廊下を進んで行った。
 杉浦の目は再び、もう一人の新入生を見た。運動部とかけ離れたタイプだ。杉浦と同様、どこかで彼らにひっかかり、とりあえず見学に行くことになったのだろうことが想像出来た。
「俺、杉浦」
「小橋」
「弓道部、入んの?」
 残った上級生の手前もあってか彼は大っぴらに否定せず、そのかわり意味深に笑った。
――やっぱり
 杉浦も同じ意味合いの笑顔を返し、それから彼と並んで先を歩き始めた上級生に続いた。






「それではただ今から、射礼を行います。射礼とは演武の一つで、礼法にのっとり行射するものです。我が遥明学院弓道部では、二人が並んで交互に弓を引きます」
 杉浦と小橋は三年生になっていた。いつもの筒袖の練習用道着ではなく、着慣れない黒紋付黒袴の正装姿で待機していると、妙な緊張を感じる。新入生歓迎会のみならず、人前での正式な射礼は初めてだった。二年生の時は、前主将・副将が行った。そう言えば杉浦と小橋が新入生の時も、まだ二年生だったその二人が弓を引いた。
「あの中に、俺達もいたな?」
 見学のために控えの席にいる新入生の一群を指して、杉浦が言った。小橋は彼の肩越しに中を覗く。
作品名:放課後シリーズ 作家名:紙森けい