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フェリオス年代記996

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そこまでいうとオフェーリアはハフッハフッとまた深呼吸している。
「なんでそこであやまるんだ・・・」
イヴァンがふとそう漏らしベルティーナのほうを見るとこちらをにらんでいたので高速で目をそらす。
ベルティーナ、ミケーレ、イヴァンら三人は嫌な予感しかしなかったが結局野営できる場所もこの先に無いということでルパート村に行くことに決めたのだった。ただ、ジウベルト君が戻ってきたときに話の経緯と今後の予定を改めて話すと少し反対したが、代案はと聞かれると夜を徹して歩くほか選択肢が無く、彼もしぶしぶ了承したのであった。



ベルティーナ以下、小隊の面々はしばらく休息をとった後ルパート村に進路を向け行軍を始めていた。
小一時間ほど進んでいると前方の東の方に続くわき道の方から修道女らしき装束をまとった人物が現れ、こちらに気がつくと軽く会釈をし、背に背負った大きなバックパックを足元に置くとそのままそこで立ち止まる。
どうやら小隊が通り過ぎるのを待つつもりのようだ。ベルティーナはそのまま通り過ぎようとしたが、ミケーレがかまわず馬上から声を掛けたため、舌打ちを打ちながらも馬の足を止め、片手を上げ隊の前進を止めた。
「これはこれはお美しい修道女のお方。もしやルパート村の方ですか?」
そう聞かれると修道女は首を横に振る。
「いいえ違います。わたしは王都のオルシュティン教会の者で、ルパート修道院に所用でまいりました」
「そうでしたか、王都からここまでお一人で大変でしたでしょう。ちょうど私達もルパート村に立ち寄るところだったので荷馬車の荷台でもよろしければお送りいたしますよ」
「でも、よろしいのですか?」
「かまいませんとも!!・・・いいですよね?ね?隊長?」
「・・・、ご自由に」
「隊長も歓迎しているようですので問題はありません!」
「・・・それは助かります。ではよろしくお願いします」
「荷馬車までご案内しましょう。さーどうぞこちらへ」
「騎士さまに感謝を」
「いや〜、まだまだ騎士見習いの修行中の身でして。ミケーレとおよびください」 そう言い手をふるとミケーレはひらりと馬を降り、手綱を引きながら修道女を案内していく。
「まったく、ミケーレったら勝手なことを・・・」
あきらかにベルティーナは機嫌を悪くした様子で手を上から前に振り下ろし前進の合図を出すと馬を進ませる。
「どうしたんですか先輩?何か心配事でも?」
「・・・この季節この天候でシスター一人で王都からここまで来るなんて、はっきり言って不自然な感じ?」
「そう言われるとたしかにおかしいですね・・・」
「でっ、でもでも、オルシュティン教会の人を送って行けば村人に良い印象を与えるんじゃないでしょうかっ」
「そうなのよ、オフェーリアちゃんの考え方もアリだからミケーレを殴れなかったし」
「・・・」
「・・・」
「でも悪い予感がするのよねー。女のカン?ってやつかな」
「ごめんなさい、まさか修道騎士団がルパート村にあるとは知らなくて…」
 とジウベルト君は俯きがちにベルティーナにあやまった。
「いえ、いいのよジウベルト君、他にやりようもないしね…」
「なっ、なにもおこらないですよきっと。だって私達はれっきとした王国軍の一員なんですし!」
「まあそれについては同感なんだけどね・・・」 ベルティーナはそこまで言うと会話は終わりという風に一つ首を振り前方を見据えた。
「騎士修道会とシスターねえ・・・ラファエーレの不始末がどれだけ面倒ごとを巻き込むことやら…、ま、今考えてもしかたがないか・・・」
落ち着いたらラファエーレにひどい仕打ちが待っているのかもしれなかった。

イヴァンが小隊の最後尾でぼんやりしていると前方からミケーレが馬を引き修道女をエスコートしながらやってくるのが見えた。 ミケーレは御者台にいる歩兵に命じ一人分のスペースを空けさせると紳士的にシスターに席を勧める。そして御者の歩兵に向かってなにやら命令しているようだ。 シスターが席に座りミケーレがシスターの荷物を荷台に丁寧に積み込むと、シスターからお礼を言われているのかミケーレは照れたようすで否定しながら馬に乗るとこちらにやってきて、速度をあわせイヴァンの左に馬を並べる。
「ミケーレ、なんだあのシスターは?」
「ルパート村に向かうらしいのでついでだから送って差し上げる」
「へー、ベルは良いって?」
「もう大賛成さ!!」
「そうか、ならいいけど。じゃあ挨拶だけでもしとくかな」
そう言ってイヴァンは馬の速度を上げようとするとすかさずミケーレがイヴァンの左腕をつかむ。
「ばっ、ばか。あ、あ、あぶな、あぶねー!!」
 イヴァンはバランスを崩しながらミケーレの腕を振りほどいた。 「なにすんだバカ!落馬すんじゃねーか!」 「ちょっとまてってイヴァン。あいさつだけだぞ!あいさつだけ!」
「ん?」
「おれさ、一目ぼれしちまったみたいなんだ」
「あー?相手はしすたーだろ?」
「関係ないさそんなものは!だ・か・ら」
「お前は年に何回一目ぼれしてるんだって話だよ!!」
「おれ、今回はなんか運命を感じるんだ」
「毎回感じてねーかそれ」
「おまえなー!!たく、今回は特別だ。今までとは違うものを感じるんだ」
「あーもうわかったわかった」
「絶対だぞ、そして俺を持ち上げてくれ!」
「お前ねー・・・」
「お前・・・クラリーチェのときお前のために俺はどれだけ・・・むぐむぐ」
イヴァンは余計なことを言おうとするミケーレの口を強引にふさぎ少し前方にいるクラリーチェの様子を見ると、まったく気がついていない様子で他の薬学科の二人と楽しそうに話している。
ちなみに何を話しているかというと
「ねえねえまたイヴァン卿があなたのお話してるみたいよ!」「キャーッ!」「いいねえいいねえ、バラの騎士様にあいされてるねえ!」「クラリーチェさんいったいどうなんですか?あなたとイヴァン様の仲は?」「そんな、なにもないよー、イヴァンとは幼馴染なだけで・・・。本当になにも・・・」「キャーッ!呼び捨てにしちゃってるしー!」「幼馴染って素敵」・・・・・・・・丸聞こえであった。
「わかった。わかったからそれは言うな。ミケーレの言うとおりにするから」
「いい子だイヴァン」
「・・・」
「見た目はベルティーナとタメはるぜ!そしてあのしとやかさ・・・。そしてなんかオーラがあるんだよなー。これは運命を感じる」
「はいはい。ま、とりあえずあいさつにいこうか」あきれた様子でイヴァンはうながすと、また話せるのが嬉しいのかうきうきしながらミケーレは先導しはじめる。
「シスター、馬上から失礼します。後方隊の責任者が挨拶したいと言うのでつれてまいりました」
「まあ、それはご丁寧に、ありごとうございます」
「では紹介します。こちらが騎士のイヴァン」
「馬上から失礼する。イヴァン=ダ=アリオスティですよろしく」
「イヴァンあちらがシスター、えー、シスター」 どうやらミケーレはまいあがって名前を聞くのを忘れていたようだ。
「ルイーザと申します。ご面倒をおかけしますがよろしくお願いします」