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フェリオス年代記996

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デルネーリはイヴァンとベルティーナをつれて大聖堂の門を素通りし、さらにわき道に入ったところにある別の門に向う。 そこにはオルシュティン教会神学校と書かれた看板が目立つように掲げられ、門の奥にはレンガ造りの建物がいくつも立ち並び、学生と思われる若者が散見できた。
「ここか…」
デルネーリは門の前であごをなでながらひとりごちる。
「先生。ここって女子部じゃないですよね?」とイヴァン。
たしかに見える範囲には若い男か男の子しか見当たらない。
「ああ、女子部はこの奥にあるんだそうだ」
「へえー」
「とりあえずいくぞ」
そう言ってデルネーリは敷地内に足を踏み入れズンズン進んでいく。
すると横合いからお待ちください!と呼び止められイヴァンら三人はそちらの方を確認すると 若い助祭らしき若者か息を切らして立っていた。
「はあはあ、騎士殿、ここは関係者以外立ち入り禁止でございます。なにか御用があれば聖堂のほうへご案内します」
「俺たちは教会神学校に用があって尋ねてきたんだ。学校の責任者に会わせろ」
「でしたらフォッジアス大司教猊下にお許しを得て頂きたい。とにかくこちらは部外者は立ち入り禁止なのです」
それを聞いたデルネーリはあごをひとなでしてから言った。
「われわれは女王陛下の命で来たのだ。何か文句があれば女王陛下に言うんだな」
そこまで言うとデルネーリは後ろの二人に向って、いくぞと声をかけると、またズンズンと建物に向って進んでいく。 若い助祭はそれを見守っていたがすぐに大聖堂の方へ向って走り去っていった。
周りの学生達は最初珍しい客人に奇異の視線を送っていたがいつの間にかその視線はベルティーナに集約していった。
「な、なんかわたくし注目されてますわね…」
「…」
「…」
注目されるうつむくベルティーナをよそ目に建物の入り口にたどり着くと 扉が自動的に開いた。そこには穏やかな顔の初老の司祭が静かに立っている。
「私はここの責任者のミローネです」
そう言って右手を胸の中央で握るオルシュティン教式の神に祈る時の礼をする。
「俺は女王陛下直属の騎士デルネーリだ。話がある」
「それでは奥でお話しましょう」 とミローネはデルネーリ達を建物内に招き入れた。
 応接室らしき部屋に案内されると三人はソファーを進められデルネーリ、ベルティーナ、イヴァンの順で座っていき、 三人が座るのを見届けてミローネが向かいに腰掛けた。
「さて、ご用件をうかがいましょうかな?」
デルネーリはそれに頷くと口火をきった。
「先日起こったルパート村襲撃事件はご存知ですな?」
それを聞いたミローネは本当に心を痛めているといった表情で言った。
「はい。本当に残酷なお話です。何より被害者はみな敬虔なオルシュティン教徒であり生存者はいなかったとか…」 デルネーリは頷きさらに語を進める。
「その襲撃者と最後に戦ったのがいまここにいる二人です。残念なことに首謀者らしき男は逃がしてしまいましたが」
「なんと…」
「そしてその時彼らに助力してくれた女性がいましてね。それがここの女生徒らしいじゃありませんか」
「ふぅ、…なるほどお話はわかりました。ルイーザがそう言った、ということですね?」
あきらめた風でミローネがため息をついた。
「話が早くて助かります。彼女についてその素性もあらかた予想はついてます。その敵も目的もね」
「そうでしょう。元々お教えしたのは我々でしたしね」
「そして今日は彼女に協力をお願いしに伺ったんですよ。この二人には一応本人確認のためついてきてもらったんです」
「なるほど、そういうことでしたか。お話はわかりました」
「で、彼女と話をさせていただけますか?」
デルネーリがそういうとミローネはひざの前で手を組み言いにくそうに話し始める。
「残念ながら、もうここにはおりません。彼女は契約者をみつけ旅立って行きました。だってそうでしょう?ここはもっとも戦事とはかけ離れた場所。元々彼女たちの目的は我等人類を助ける事ではないのですから。悪い言い方をすればついでに助けているだけの事。我々は彼女らを手助けし、ついでに助けてもらえるよう支える為の組織で、それはフォッジアスの王権者を指導者と認めてもなんら変わりません。なので路銀をたっぷりと渡した上で送り出しました」
「あいた〜、間に合わなかったか…」
デルネーリは相手の事をまったく疑わず相手の話を鵜呑みにしたような反応をしたが、それもそのはずオルシュティン教徒にとって嘘は絶対の禁忌であり、話した事は全て完全なる真実。仮に話したくない事があれば彼らは黙して語らない。 それを前提に話しているからだ。
ちょうどそのときドアが開き豪華な衣装をまとった白髪の老人が入ってきた。
「残念だったなデルネーリよ」
デルネーリはそう言われると立ち上がり軍の礼を返す。
「お久しぶりです大司教猊下」
大司教は楽にしろと手で合図するとデルネーリはまたソファーに腰をおろす。
大司教はゆっくりと時間をかけ、ミローネの隣に腰をおろした。
「まあそういうわけじゃ」
「はあ、帰ったら怒られるな、校長に…」
「ブルーメのやつじゃな?帰って伝えろ。どうせ彼女を連れて帰れたとしてもお前なんかとは契約させてもらえんから安心しろとな」
「そんな事いったら私は大変な目に合わされてしまいますよ…」
「その時はわしの所にこい、面倒見てやるぞ?」
デルネーリは大司教の言葉に苦笑を浮かべながら答えた。
「考えておきます」と。
そのあとデルネーリ達は大司教と軽く雑談を交わしたあと部屋を後にした。
建物を出ると先ほどとは比べ物にならないほどのベルティーナを見に来た男子学生が集まり大混雑であったが、 「うざってえ」といらいらしてきた様子のベルティーナににらみつけられると自然と道が開きすんなりと門外に出る事が出来た。
敷地から少し離れた所でイヴァンはベルティーナに声をかけた。
「やっぱすごいなベルティーナは…」 とイヴァンは感嘆した様子でベルティーナに言うと
「わたくしは見世物じゃないっつうのよ!失礼っつったらないわね!」といらいらした戦闘用の口調で答える。
「…」
イヴァンはいまは触らぬ神に祟りなしと相槌をうつのもこらえ、違う話題をデルネーリに振った。
「しかし大司教猊下ってすごい気さくな方ですね」
「あ、ああ、あの人は昔っからあんなだぞ。だがまあ、本当にいい人だな」
「大司教猊下は校長と仲がいいんですか?」
「仲悪いんじゃないか?普通に」
「え?あ、あんな事言ってたからてっきり親しいのかと思ってました」
「昔、俺も同じ質問を校長にしたんだが、やっぱりそのまま仲悪いって言って文句言ってたしな」
「へえ〜」
そこまで話した所で広場にたどり着くとデルネーリ先生がイヴァンとベルティーナを並ばせ話しかけた。
「今日の事は誰にも話すなよ?話が漏れたら身分に関係なく首が飛ぶと思ってくれていい」
「ゲッ、首…、マジでですか?」
イヴァンが驚いたように言うとデルネーリは無表情で頷く。
「冗談抜きだ」
「どこからどこまでの話がだめなんですの?」
とベルティーナが尋ねる。