神飛行機
そして、考えているうちに、金の亡者たちに突っ込んだ……。タンクローリーにブッ飛ばされた金の亡者たちは、衝突したことにより、我に帰ったわけであるが、後の祭りであった……。ある者は、折れて尖った先端を持つ木の太い枝に、胸をぐさりと貫かれて死んだ……。別のある者は、体を変な角度に折り曲げながら転がっていき、止まったときには、公園のオブジェのような芸術的な体の曲がり具合で死んでいた。また別のある者は、水飲み場の蛇口に頭をぶつけ、水飲み場の水に負けないほどの高さの血を頭から噴き上げて死んだ……。
タンクローリーはというと、ボンネットに赤い化粧をほどこしながらタワーまで進み続け、タワーの真下にある飲食店のテーブルやイスをなぎ倒した後、タワーの足場の鉄塔部分に衝突した。勢いがついていたため、運転手は、座席と鉄塔との間に挟まれて即死した……。
幸い、飲食店は開店前で客はいなかったのだが、テーブルやイスの下を、傷ついたタンクローリーから漏れだしたガソリンが流れ始めていた……。そして、そのガソリンは、ポイ捨てされたばかりらしいタバコまで流れついた……。
ドォーーーン!!!
やまさんの小説ではおなじみの大爆発が起きた……。爆発したタンクローリーからの爆風が付近の木々をなぎ倒し、公園近くに建ち並ぶデパートやブランドショップの窓ガラスをバリバリバリバリと割った。店内に並ぶ原価が安そうな商品は、突き刺さったガラスの破片による装飾がほどこされることとなった……。通りがかった人も吹き飛ばされたが、すぐ近くにいた人や新年早々運が悪い人を除き、ケガだけで済んだ……。
「金が!!! 金が!!!」
「それは俺のだぞ!!!」
まだ残っている金を、金の亡者たちは争って集めている……。燃えている金をつかみ、燃えながら金を集めているその光景は、不気味としかいいようが無かった……。頭から血を流している者もおり、そいつが力尽きて倒れると、そいつが集めた金を、他の金の亡者たちが一斉に奪いあった……。
……それはさておき、紙飛行機のことであるが、大爆発が起きる前まで歩道に着陸していた。行き交う人々は、その紙飛行機が1万円札でできていることなど気づかずに通り過ぎていく。ひたすら急いでいる多くの人々の目には、紙屑にしか映らなかったのだろう。
大爆発が起きて、爆風が歩道に達すると、紙飛行機はその爆風によって、空高く離陸していった。そして、街の上空を通る風の流れに乗ると、逃げるようにその場から飛び去っていった……。