社会保障番号 Hiroko
瓜二つの私を守るために
むかしのスケバンみたいなロングスカートの女子校生たちが、ひとりの少女を囲んでいる。
「ねえ、お金無いの」
「ないわ。ギリギリだし」
「嘘言うな」
「やめて」
「おいポケットとカバンを調べな」
周囲の大人たちは、見て見ぬふり。あきらかに強迫行為。犯罪である。2010年代から、いじめ問題で未成年の行為に対しては過敏になっている。
その時、博子はLTE通信機能つき一眼レフカメラで、スケバンたちの顔写真を撮影した。警視庁のクラウド(データーを格納するサーバー)にダイレクトに保存される。
一眼レフカメラが連写する音がする。
小刻みなシャッター音が聞こえる。
「あんた。なにしているの」
スケバンの一人が叫んだ。
「わたし、弱いものいじめが嫌いなの」
博子は、スケバンたちを睨みつけた。
スケバンたちは10名いる。博子の一眼レフカメラを破壊しようとした。
カメラに顔認識機能があり、個人の顔を認識すると、GPS機能で場所が正確にわかる。顔で個人を特定する生活保障番号(国民背番号)の情報が送られる。警視庁から、公園の近くにいる警察に自動的に知らされる。
ひとりひとり、国民背番号、すなわち一人でいくつもの固定IPアドレスが振り分けられる。
作品名:社会保障番号 Hiroko 作家名:ぽめ