社会保障番号 Hiroko
田舎に住めば黄金の都、田舎者は勝ち組!
21世紀の現在、戦時中以前から時が止まったかのように価値観が固まっている人たちは、党に対して何も文句を言わない。というは受験で、社会科関係を学んでもすぐ忘れるようにできているし、既に歴史については、戦前、戦時中の日本をトコトン美化していることしか教えない。
公立中学までの教師は全員、党に対しての忠誠心があつい。
都内では頭がおかしいおじさんが多く、電車のドアに何度も体当たりして、ガラス窓破壊で800万円の弁償金を支払われる。高級車が1台、簡単に買えるほどの弁償金。それに駅では、突然、大声で叫ぶおじさんたちもいる。かなりストレスを溜め込んでいる。
それにくらべて、田舎は封建的で軍国主義で政治に無関心だけど、選挙になると寝たきりの老人でさえも選挙に駆り出される。選挙の時、田舎にいくと電話回線がパンクする。通じなくなるほど電話での選挙の催促がくる。
まだ、私は未成年者だけど、選挙になれば必ず党に忠誠心を持った人から電話が来る。
全体主義社会、共産主義者会ではどんなに貧しくても自分たちは惨めだと思わないし、党に対して、むしろ感謝の気持ちを抱いている。「無知こそ力」何も知らない方が幸せなんだということ。
でも、都会育ちの私は不幸な大人たちを知っている。
日曜日、ジーンズにTシャツという女の子としては質素な服装で、ひろみとお茶を飲みに行く。
「ひろみ、党は最高だわ。私たちの生活を守ってくれる。だって性犯罪が撲滅したから。ねえ、私、党のために働きたいから、進路は高校を卒業したら、国防軍に入り、そこを出たら警視庁に就職するわ」
私はウインクした。そんなことは大嘘。全く逆のことを言っている。
「偉い。博子は。女学生の模範」
喫茶店の中には、多くの監視カメラがある。タブレット端末などのモバイル機器にもカメラがあり、そこから、警察に市民の動きを監視する。
そのため、既に小さな犯罪事件はなくなったが、衛星政党の党員家族の惨殺事件も多発している。警察は党の飼犬。政治家とか官僚は、どんなにむごたらしい犯罪をしても警察に捕まることはない。冤罪事件も多い怖い世の中。猟奇犯罪事件の冤罪の被害者になるのは、貧困層の若者である。
それに衛星政党には何の権限もない。外部からは党を潰せない。
午後3時、君が代のメロディが鳴り、みんなは起立する。みんなは、それぞれ会話をすることをやめ、国家を歌う。テレビスクリーンには日の丸が映し出される。
『愛国心と忠誠心を』
「愛国心と忠誠心の強化」
『臣民のみなさん、愛国心強化月間です。日本のため、アメリカ合衆国の繁栄のために、全力で働きましょう』
私は党を内部から破壊する。そう決心した。この国は狂っている。
「ねえ、もうすぐ受験勉強をしないと。偏差値が高い県立国防学園に入学して国防軍に入るから」
「がんばってね」
「ありがとう」
私は、こんな狂った国は内部から崩壊させなければならない。
党に忠誠心こそ、最も尊敬される。
作品名:社会保障番号 Hiroko 作家名:ぽめ