護国の騎士
「物語の女騎士が初恋の人って」
「ははは。ま、初恋とは少し違うかな。憧れたんだ。凛々しく、優しく、強い意志と正義の心を持った騎士。そういう騎士になりたいと、な」
古びた本の表紙を優しくなでて、団長は語る。過ぎ去ってしまった子供の頃の思い出を愛おしむ様に。きっとこの思いが団長の原点なのだろう。が、
「・・・懐かしそうに思い出を語っても仕事は減りませんよ」
「分かってるよ。ラスティンは真面目だなー」
さすがの団長も観念したのか、若干ふてくされた様子とはいえようやく書類に向かう。ほどなくして、ペンを動かす乾いた音と紙の触れ合う微かな音が執務室に響き始めた。初めからその調子なら、仕事はすぐに終わるのに。
最も、団長が初めからやる気を見せて仕事をすぐ終わらせたことなど、一度もないのだが。