護国の騎士
「さて、私が勝ったからには、こちらの要求を聞いてもらわねばな」
この時、団長は至極楽しそうだったが、俺は何を言われるか気が気ではなかった。要求をのむと約束した手前、何を言われても拒否はできないのだ。一方的に決闘を申し込んだのだから、罰を言い渡されてもおかしくない。むしろ当然だ。騎士として、潔く罰を受け入れなければ。俺は覚悟を決め、団長の言葉を待った。
「ラスティン・アイゼンバーグ。君を私の副官に任命する」
「・・・は!?」
思わず声が裏返った。一瞬、自分の耳を疑ったくらいだ。しかし聞き違いでなければ、団長は俺に職位を授けると言ったのだ。それも、団長の補佐として高い能力と忠誠を求められる副官という職を。
「なぜ俺を!?」
「君は有能だからだ。なにしろ団長就任後の初仕事が騎士団の再編なのでな。残念ながら新参者の私は騎士団の内情に詳しくない。その点、君は他の騎士たちのことに詳しいし、再編を任せるには打ってつけだ」
「しかし俺はあなたに剣を向けたんですよ! そんな人間を副官に任命するというんですか!?」
「仕事は効率よくやる主義だ。それに、優秀な人材を手放す気はない。君は先代騎士団長の息子だったから彼の副官になったのではなく、副官となるにふさわしい能力があったから副官となったのだろう? 剣の腕もそれ以外でも」
団長はにやりと笑って俺を見た。
「断るのは構わんが、騎士たる者、約束を守るべきではないか?」
「う・・・」
「そういうことだ。よろしく頼む。ラスティン」
俺に拒否権はなかった。約束を反故する訳にはいかないし、これは騎士団長の命令なのだから。
「・・・副官の任、謹んで拝命いたします」
その日から、俺は団長の副官になった。