小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

コウタと嘉助と浜昼顔

INDEX|1ページ/9ページ|

次のページ
 
「なあ、コウタ。ここいらは昔、ひろーい原っぱだったんじゃぞ」
 コウタを連れて国道までやってきたひいおじいちゃんは、歩道橋の上にのぼると、決まってこういいました。
「小家名(こやな)の浜っていってな。海からの砂浜がずうっとこっちまで続いてたんだ」
と、家なみの向こうに少しだけ見える海から、右手の小高い丘までを指さしました。
 戦争が終わるころまで、このあたりには家が一けんもなく、今、歩道橋の下を走る国道が、そのころはあぜ道のように細く続いているだけでした。
 そして、ハッカや浜昼顔の生えたこの小家名の浜では、大ぜいの子どもたちが地区ごとのグループに分かれて、『戦ごっこ』をして遊んでいたのです。
 ガキ大将の指揮の下、作戦を立てる参謀や敵をさぐる斥候まで、それぞれの役割もちゃんとありました。
 どろを丸めた爆弾、木の実の弾のパチンコ、竹で紙の弾をふき飛ばすふき矢など、自分たちでくふうして武器を作って戦ったのです。
 コウタのひいおじいちゃん、嘉助(かすけ)は、八十七歳。散歩のたびにコウタをつれてここにきては、昔をなつかしんでいました。
 七歳のコウタは、ものごころつく頃から、耳にタコができるくらい聞かされていましたが、この話が大好きでした。
 子どものように目をきらきらさせて語る、ひいおじいちゃんの話は楽しくて、まるで自分がその場にいたかのようにワクワクできたからです。
 そして、次に決まってひいおじいちゃんはこういいました。
「コウタ。お前の名前はな、わしの親友幸太の名前なんだぞ」
 ひいおじいちゃんは、自分の子どもにこの名前をつけたかったのですが、うまれたのはみんな女の子でした。やっとひ孫になって、男の子が生まれたのです。
「おまえがうまれて、ようやくわしの夢がかなった」
 ひいおじいちゃんは、シワだらけの顔に目がうもれてしまうほどの笑顔で、コウタの頭をなでました。
 ひいおじいちゃんの親友の幸太(こうた)は、このあたりの村では一番のガキ大将でした。
 今、小学校が建っている、歩道橋の右側にある小高い丘を庚申山(こうしんやま)といい、幸太とひいおじいちゃんのグループは、そこを陣地にしていました。
 その場所は、昔から、キツネがでて人をだますといわれていた場所でした。
「小家名のキツネの話はしたな?」