フィルムの無い映画達 ♯02
だぶりゅーのひげき
「別れましょう」
彼女から突然の通達。
「なんでだよw」
雨脚は強まりもはや剛脚。僕らは別々の色の傘を握り締めている。
「あなたの事・・・好きよ」
「じゃあ・・・別れる必要なんてないじゃないかw」
「でも、もう無理なの」
彼女の長い髪は半ば濡れている。体もさぞ冷えているだろう。心は?
「僕の・・・僕のどこがいけないのかなw 君を愛しているw 心から君を愛しているんだwww」
彼女の目に雨が入り込んだようだ。うるうるしている。
「分からないの・・・どうしてか分からない。だけどあなたの言葉が信じられないの」
「どうして?こんなに真剣なのにw」
ヘッドライトが塗れた路面に余映えをなして幾つもの小さな幻影
「僕の喋り方・・・おかしいかな?そのせいで真剣に聞こえないのかなw」
彼女は首を振る。髪の先っこにしがみついていた滴が跳ね跳ぶ。
「そんなことはないわ」
「僕の表情・・・おかしいかい?笑ってるように見えるかいw」
「見えないわ・・・とても真剣な眼差し・・・痛いくらいよ」
「どうすれば、君にこの思いが伝わるのかな?こんな中途半端な別れ方は嫌だw 僕の事が嫌いならはっきりとそう言ってくれwww」
「ごめんなさい・・・私にはそんな思いやりのある嘘はつけない・・・あなたの事は好き。あなたはいつだって私に真剣だった。でも・・・あなたの言葉・・・何故だか私を苦しめるの・・・さようなら」
彼女が雨になる。僕の前から消えてしまう。雨と同じだ。結局は。
僕は風に傘を渡した。誰かに飛んでいくがいい。
「こんなに・・・愛していたのかw」
自分でも呆然としたw とんでもない喪失感だったw 人生の意味のあらかたを彼女はもぎ取っていってしまったwww
「嗚呼、こんな人生に意味なんてないwww」
「いっそ死んでしまいたいwww」
「愛してたんだーーーwwwwwwwwwwwwwwww」
苦悶の表情は行き過ぎると笑顔に似るw きっと今の僕はそんな顔をしているのだろうw どうせ本当の気持ちは誰にも見えないw
言葉だって目に見えないw
その見えない何かが、彼女を苦しめたw
僕の言葉に付属する何か・・・
水たまりに水没する体・・・僕の嗚咽はもはやwwwの羅列
作品名:フィルムの無い映画達 ♯02 作家名:或虎