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即興小説集

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(1時間/お題:官能的なロボット/主人公×主人公にそっくりな新婚さん仕様のロボット)

「ちょっ、駄目だって!離れなさい!」
「何でだよ、嫌なのか?」

俺に跨って何やら下腹部の辺りをゴソゴソとしているそいつを無理矢理引き剥がす。
こいつと会ってまだ数十分。初対面なのにいきなり押し倒されたと思ったらこれだ。
スキンシップが激しい。あまりにも激しすぎる。
しかし当の本人はそれを全く理解していない様子だった。
まぁ、無理ないか。だってこいつ、ロボットだからな……。


あらすじはこうだ。
先日、俺の友人が亡くなった。
そいつは研究熱心なやつで、特に機械にはズバ抜けて詳しかった。
色々な発明をしては様々な賞を受賞し、業界ではかなりの有名人だったらしい。
しかし研究に明け暮れる日々が続き、彼は健康を崩してしまった。
それでも機械いじりが大好きな彼は周りの声も聞かずに四六時中研究室に閉じこもり、最悪の事態を招いてしまった。

そして後日。
彼の遺族から「あなたに預かって欲しいものがある」と告げられ、渡されたのがこのロボットだ。
「じゃあ、この子をよろしく頼みますね」と引渡しの人がいなくなった途端、冒頭のように押し倒されて今に至る。

俺は一人暮らしだし、家だって狭くない方だ。
同居するにあたって問題はあまりない……と思うのだが、今回対面するに当たっていくつか難点が見つかった。
まず一つ目がこいつの貞操のなさ。夜這いは勘弁願いたい。
そしてもう一つが……。

(こいつ、俺にそっくりすぎるだろ!?)

こいつがあまりにも俺にそっくりだということだ。
最初見たときは大層驚いた。
「これって俺じゃないですか!?」と思わず声に出してしまったぐらい驚いた。
でも引き受けた以上は面倒を見るしかないわけで……。
なんでこいつを俺に預かって欲しいのか、その訳が痛いほど分かってしまった。


「ご主人様?」

きょとんと小首を傾げるそいつになんて声をかけていいのか分からず、「とりあえず飯でも食うか?」と当たり障りのないことを口にする。
燃料は普通の人間の飯で大丈夫って聞いてるし、適当になんか作るか。
俺の質問に「了解」とそいつは短く答えてから、キッチンへとスタスタ歩いていってしまった。

「え、何?お前が作るの?」
「ああ。奥さんが料理を作るのは当然だろ?」
「は!?奥さん!?」

何だよ奥さんって!お前奥さんなの!?
自分の姿とそっくりなそいつの自称奥さん発言を聞いて、何だか胸の奥がむず痒くなってくる。
というか開発者、お前は一体何が目的でこいつを作ったんだ!?なんで俺にそっくりなの!?
死人に口無しとはよくいったもので、その答えを得ることはおそらく一生ないだろう。
いや、知ったところで反応に困るけど……。

「おい、エプロン貸してくれ」
「エプロン?あぁ、ごめん、ねーわ」

流し台で手を洗い、傍にかけてあるタオルで水を拭いながらそいつは問いかけてきた。
一人暮らしの男の家にエプロンなんてもんは残念ながら置いていないので素直にそう言うと、「そうか……」としょんぼりした様子で目を伏せる。

「いいよ、そういうの気にしないから。そのまま飯作って大丈夫だよ」
「だけど、これじゃあ新婚さん気分が台無しだ……」
「ん!?新婚さん!?」

またもや聞き捨てならない台詞に、思わず耳を疑った。
これって新婚さん設定だったのか!?
ますます開発者の意図が知りたくなってくる。
あいつ、俺に対してそんなこと考えていたのかよ。全然気が付かなかった……。
いよいよ耐え切れなくなってきて、今まで思っていたことを口にする。

「あのさ。お前が以前どんな生活していたのかは聞かないでおくけどさ、うちではそういうのやらなくていいから」
「でも……」
「普通でいいよ、普通で。設定とか気にしなくていいから。な?」

ぽんぽんと頭を優しく叩き、まっすぐに目を見て言い聞かせる。
設定されているロボット相手に果たして効果はあるのかは謎だが、言わないよりはマシだろう。
いまいち言葉が飲み込めなかったのか最初こそ戸惑っていたものの、その後すぐに「分かった」とそいつは首を縦に振った。
その反応に「うんうん」とこちらも満足げに頷く。
自分と同じ姿のやつと新婚さん設定だなんて、ただただ虚しくなるだけだからな。

「まぁ、そういうことだから。よろしくな」
「了解」

今まであまり表情を変えなかったそいつが、ようやくにこりと微笑んだ。
こちらもそれに微笑みを返してから、「じゃあ飯でも作るか」と改めて調理用具を用意する。
お前は何食べたい?と俺が口を開く前に、そいつがペラペラと言葉を連ねた。

「キッチンといえば、『料理を作る奥さんに後ろから抱きつきながら、「料理よりもお前を食べたい」と囁く』シチュエーションだな。さぁ、どうぞ」
「話聞いてた!?」

キラキラと目を輝かせながら言うそいつに、もはや頭を抱えることしか出来なかった。
しばらくは戦いの日々になりそうだ……。

作品名:即興小説集 作家名:凛子