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即興小説集

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(15分/お題:生きている太陽/明るい攻め←粘着質受け)

太陽だ、と思った。
いつも笑顔で明るくて、誰にも隔てなく接する、優しい人。
それはまるで晴天の空に輝く太陽のように眩い光りを放っていて、周囲を明るく照らしてくれる。
僕はそんな彼が大好きだ。彼と一緒にいるとポカポカと心が温かくなって、陽だまりでお昼寝をするような心地好さに包まれる。

でも、太陽は遠い。
手を伸ばせば届きそうなのに、いくら求めても触れられない。近くて遠い、身近な存在。
どうすれば手に入れられるだろうか。どうすれば僕だけのものになってくれるのだろうか。
手に入らないと知りながらも心は彼を求めてやまなかった。
この強い独占欲を抑えられるほどの理性を持ちえていない。
そう、仕方なかったんだ。だって僕は彼が欲しい。この輝きを自分だけのものにしたいんだ。

捕まえるのは案外容易かった。
彼の意思なんか関係なく、自分本位に動いて徐々に彼の行動範囲を狭めればいいだけのことだった。
ストーカー行為。監視。嫌がらせ。
自分の手を汚してでも彼が欲しかった。それほどまでに彼を愛していた。すべては愛故の行動だった。
これは僕なりの愛情表現なんだよ。彼だってきっといつかは分かってくれると思っていた。
いつものように太陽のような笑みを浮かべて許してくれると信じていた。

しかし、その予想は外れてしまった。
太陽に手を伸ばせば伸ばすほど、付きまとえば付きまとうほど、その輝きは失われていった。
笑顔は陰り、光りは消え、青空は厚い雲に覆われて、いつしか土砂降りの雨が降り注いでいた。
晴天だったころの面影など見る影もない。
今は彼がいるだけで周りは辛気臭くなり、彼から発せられる湿気でカビやキノコが大量発生しそうなほど鬱々とするようになった。

あの輝きはどこへ行ってしまったのだろうか。
僕が欲しかったのはこれじゃない。
もう、こんなボロ雑巾になんて用はない。
心の底から落胆した僕は、ゴミ箱にゴミを捨てるように、太陽だった燃えカスを放り投げた。

作品名:即興小説集 作家名:凛子