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凍てつく虚空

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ィ        知尻 |    読者の皆さんは円形だと  |霧                          
            |    考えてください。)    |   
            |                 |                         
            |                 |  
            |                 |                      
         真壁 |                 |貴中                      
            |                 |                       
            |                 |                      
            ――――――――――――――――――                                         
                猪      不   
                井      二
                田      見





「このロビーとのドアに一番近い席は私だった。そして時計回りに、新馬理緒、浦澤瞳、田子藍那、霧綾美、貴中怜、不二見未里、猪井田姫世、真壁冬香、そして知尻マリア、
だったはず」

「・・・・・・・・・ふぅん」

少し間延びした返事だった。
その後の返答はなく、ただゆっくりと時間がすぎるのを待つだけだった。
徐に鷹見くんは動くと、キッチンの奥に消えていった。
何処に行くのだろうと眼で追うと、彼はキッチンにあるものを探りはじめた。まずはゴミ箱の中だった。
その中には私たちが最初に食べた夕食のゴミや残飯が入っていた。
正直素手で触るのを躊躇われるものだったが、それでも彼はお構いなしに中の物を全て出した。
ゴミ箱の中身を全部出したかと思うと、こんどはそのうち缶詰や冷凍食品のパッケージを具に眺めた。それがどうしたんだろう、保存料でも確認しているのだろうか、そんなことすら考えていた。

「ほれ、これがまず最初の答えだ」

急に彼はそう言った。
そう言って持っていたパッケージの2つ3つを丸めて投げてきた。反射的にそれをキャッチする。

「それ見て気がつくだろ?」

彼の言っている意味が分からなかった。
私は言われるがままにそのパッケージに視線を落とす。

「製造年月日を見てみろ」

促されるまま、製品の製造年月日に視線を落とす。

「平成13年12月・・・、これが何か?」

「今日の日付は?」

「平成14年2月」

「な?」

「???」

「おいおい、おかしいと思わないのか? なんで去年の12月、今から3ヶ月前の製品があるのかって思わないか?」

「うん? どういうこと」

「・・・・・・良いか、この山荘はかの『黒川影夫』氏の別荘であり、その所有者が亡くなったのと同時に使われなくなった。だとすればだ、今から4年〜5年前から使われていないはずだ。ならなぜ3ヶ月前の食料がここのある?
さっきみんなの前で質問したよな、『お腹の調子が悪い人はいませんか』って。ちょっと気になったんだ。皆はこの山荘に閉じ込められて何日も経つ、精神的ショックでやつれている人もいるが、空腹で苦しんでいる人がいない。
精神的ショックで空腹を感じなくても最悪水は飲まなくてはいけない。でもそれで困っている人がいない。これはちょっと変だと思ったんだ。ここに残されているものを口にしたとしても何年も前のものなら絶対にお腹を壊すはずだ 」

「そうか」

「そう言うことだ。つまりは3ヶ月ほど前にこの山荘に訪れた人間がいるってことだ。じゃあそいつは何故この山荘に食料なんか持ってきたんだ、いやそもそもどうやってそいつはこの山荘に入ることができたんだ。理由は決まってる。
ここで近々惨劇が起こることを知ってたんだ。そしてそこで閉じ込められる人間がいることも、同時にその中に自分も含まれることも、そう全部だ」

「え、ってことは・・・」

「あぁ。残念ながら犯人はやっぱりこの山荘の中にいる。それもどこぞの賊とかではない、こう言ったまともな食料を口にすることができたメンバーの中の誰かだ、犯人ははっやり劇団の中にいるな」

重い足取りだった。
私もショックだった。今の今まで犯人は私たちメンバーの中にいるのではないか、そう思ってもいた。でもこうやって第三者にてきかくにずばり言われると、やはり精神的に来た。
日頃仲良くしていたメンバーに、殺人犯が・・・。

しかし、当の彼はというと既に次の作業に入っていた。
吐き出したゴミを元のゴミ箱に戻すと、今度は舞ちゃんの部屋と同じように窓を開け始めた。そしてそこから顔を出す。
でも真正面に見えるのは、防風林・防雪林の役目を果たすアカマツが並んでいるだけだ。首をもう少し出して上下左右を眺める。特に下面、雪の積もっている場所に何か不審物はないか見ているようだった。
でも結局お目当てのモノは見つからなかったようだ。

「・・・やれやれどうも上手くいかないな」

そう言うと、頭にかかった粉雪を払う。

「えっと、先ほどの話に戻りましょう。んとなんだっけ。そうそう殺害された田子さんの話でしたね。殺害された田子さんの隣に座っていたのは、浦澤さんと霧さんって訳か。ふむふむ」

「どうかしたの?」

「いえね、片方は既にこの世を去っていて、もう片方は先ほど名前が出てきた人でだから」

「先ほど名前が?」

「『閂が締まってる』と発言したのが、確か霧さんだったはず」

鷹見君は唇に人差し指を押し当てて、また黙りこくってしまった。
今の言葉はどういう意味だろう。霧さんに何かあるのだろうか?

「あの霧さんが何か? さっき理緒が言ってた真壁さんのことは。さっきの推理だと、あの、真壁さんが犯人って言ってたけど」

「まぁ確かにそうですね。ただ新馬さんの『真壁さん犯人説』も愚直に飲み込めば良いというわけではありません」

「何か引っかかる箇所でも?」

「新馬さんが申した推理は確かに筋が通っていました。でもそれはあくまで、一見するとです。部屋の外から磁石で拳銃を操って部屋の閂を閉めたとおしゃっていましたが、果たしてどこまでそれが可能なのか。
磁石で拳銃を操るといってもかなりの時間がかかります、壁の外から慎重に操らないと、拳銃が落ちてしまいます。かと言ってあまり時間をかけすぎると皆さんが二階に上がってきてしまう。
そんな急造な密室トリックをそんな簡単にできるでしょうか。まぁ、ここは真壁さんの別荘だと考えたらそれも練習でカバーしたと考えましょう。
では次の事件はどうか。このキッチンでみんなで食事をしたときの田子藍那さんの事件です。新馬さんはこう言ってました。箸の逆側に毒を仕込んだと。普通に使うときには毒は口には入らないが、逆さ箸をしたときには掴んだ食べ物に毒が付着すると。
作品名:凍てつく虚空 作家名:星屑の仔