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凍てつく虚空

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眠気眼でドアを開けて外の様子を見たんだ」

「よし、じゃあ理緒、君は?」

「私はベッドで横になってました。でも未里さんとは違って、すぐに寝るんじゃなくって本を読んでました。ほらここの書斎にたくさん本があったじゃないですか。あのうちの一冊を借りて目を通してました。そしてあの音を聞いて部屋を出ました」

「じゃあ最後、怜は?」

「私は特になにもしてません」

「何も?」

「あぁ、何もって訳じゃなくて、台本を読んでました。次の公演の台本です。今度の役柄はセリフも多いし、あと裏方の仕事が入ってくるので、頭に叩き込もうと思って」

「了解。じゃあ今の話を統合してみて、とりあえず今のところ怪しいことは無いかな。まぁ、と言っても皆アリバイの確認のしようがないんだよね。皆ひとりひとりだったから」

「ちょっと待った。ちなみに姫世たちはここで何してたの。私たちだけに事情聴取して自分たちは無関係っていうのはルール違反じゃないの」

「ん、私この時まずたちのアリバイかい。と言ってもな何を言えば良いのか」

困った猪井田さんの脇から言葉を挟んだのは知尻さんだった。

「最初にキッチンにいたのは愛さ。体調が悪そうにこのソファに座っていた。で、次にきたのが私。で何か飲みたいと思って隣のキッチンに移動した。そこでウィスキーを見つけたからちょっと失敬した。で紅茶にウィスキー入れようと思って用意して、
ここに戻ってきたら姫世が二階から降りてきたってわけさ」

「ふうん、じゃあなに、2人とも勝手にウィスキーを飲んだってわけ」

「正確には3人」

その言葉に真壁さんはやれやれと肩をすぼめる。

「じゃあ話を戻すよ。何かここまでで引っかかることはある?」

「引っかかるじゃないけど」

手を挙げたのは未里さんだった。

「私は寝起きだったから音を正確には聞いてない。夢の中かなって思ってた。だからその音が本当に銃声だったのか、本当に舞の部屋から聞こえてきたのかわからない。その音は本当に舞の部屋から銃声が聞こえたのか、それははっきりさせたい。
いいdさんは銃声を聞いたんですよね。本当に銃声でしたか?」

「難しい質問だね。私はあれが銃声だったと思ってるよ。ただ今までに本物の銃声ってやらを聞いたことがないから確証は持てない。他のみんなはどうだろう」

反応したのは貴中だった。

「私も聞きました。あれは銃声だと思います。確かに猪井田さんと同じように本物の銃声を聞いたことが何ので百%とは言いませんが、ねずみ花火の類の音とは違ったと思います」

「鶴井の隣の部屋の怜がそう言ってるけど、反対側の部屋の霧はどう思った?」

「さぁ。私はそれまでシャワーを浴びていたので怜ちゃんほど断定はできないけど、でもやっぱり今まで聞いたことがなかった音だし、それにちゃんと舞ちゃんの部屋の方向から聞こえた。それは確かかな」

「ふんふん。まぁどうやら今の話をまとめると、当時の銃声は花火等の音ではなかったし、ちゃんと舞の部屋の方向から聞こえたって事でいいみたいだね。じゃあ次に進めるよ。
じゃあ皆が銃声を聞き、二階にやってきた。時間にしておよそ2分から長めに見積もっても3分、鶴井舞が部屋から出てこない。このとき、そもそも舞が部屋から出てきていないって気づいたのはマリアだった。
そこで私は、舞の部屋のドアノブを回してみたところが、ドアは開かなかった。てっきり鍵が掛かっていると思った。そこで、冬香が一階のキッチンまで鍵束を取りに行ってくれた。
ちなみに、冬香が鍵束を取りに行ったとき鍵束は本来の場所にあったんだよね?

「あぁ、あったよ」

「ついでに確認するけどマリア、ウィスキーを取りに行ったとき鍵束はあった?」

「ううんと、確かあったはず。そんな目で見るなよ。だて鍵束があるかどうかなんて意識して見てないよ。たしか視界の隅にあった気がする、程度だね」

「ふむ。でも視界の端にあった気がする以上、本当にあったんだろう。で冬香に鍵束を取ってきてもらっていざ鍵を開ける。そしてその後、もう一回ドアノブを捻ってもドアは開かなかった。ここで鍵の他に閂も掛かっているんじゃないかって話だ。」

「そうそう。で、そこでドアを打ち破ろうと言ったのは姫世だったね」

「うん。皆が聞きつけて部屋を出てくるはずの音を聞いても一人だけ出てこなかったからね。もしやと思って打ち破ろうと思ったのさ。変な思考回路かい?」

「んん、全然」

「じゃあ話を続けよう。ドアを打ち破るってことで、協力したのが浦澤瞳、そして真壁、知尻、貴中と合計5人。この5人でドアを打ち破った。そして発見したのが鶴井舞の遺体だった。
状況は拳銃で額を一撃だった。その使用されたと思われる拳銃は鶴井舞の近くに落ちていた。さぁここまでで聞きたいこと、不明なことはあるかな」

「本当に閂は掛かっていたんですか?」

「未里の言うことはわかる。閂が実際には掛かっいなかった可能性があるってことだろ。でもその可能性はないね。だって鍵を開けたあと、ドアノブを触って確認した人物はたくさんいる。私以外に、冬香もマリアも、瞳も触ったはずだ。
これだけの人間が触って閂が掛かっていたと勘違いするってことはまずない。あのとき閂は絶対にかかっていた。その触った全員が証人さ」

「じゃあこれはどうでしょう。最初、舞の部屋は閂は掛かっていたが、鍵は掛かっていなかった。そこへ真壁さんが鍵を持ってきて鍵穴に差込、そして鍵を締めてしまった。ここの鍵は初めてだから、普通の鍵と違って、鍵をかけるのが左右逆だった。
真壁さんは鍵を締めたと思ったが、実は逆に今まで開いていた鍵を締めてしまったのでは、とこう考えられませんか?」

「ううん、却下だね。だってそれならドアを打ち破ったとき、鍵自体も大きな力で曲がってしまうはず。でも事件後見てみたけど、曲がっていたのは閂の方だけで、鍵自体は普通に引っ込んでたよ。だからあの時、鍵は開けられていたはず」

「ん〜〜、そうですか」

「他にあるかな」

「犯人はドアじゃなくって、窓を使ったんじゃないの」

「窓か。確かに可能性としては考えられないけど、でも廊下を使って逃げるより難しいんじゃないのかな。外は大吹雪だし、そもそもあそこは2階だ。窓から出ても地面の雪に落ちて帰って来れないよ」

「本当に舞は死んでたんですか?」

「それは議論する必要はないだろう。脳天を銃で打ち抜かれれば宇宙人以外はまず絶命するはず。これは議論の余地はない」

「いえ私が言うのは、あの拳銃はフェイクじゃないかってことです。皆さん銃声が聞こえて部屋に入ると銃が落ちてるから銃で舞は殺されたって思ってるかもしれませんが、果たして本当に拳銃で舞は殺されたのかってことです。
もしかしたらそれこそ犯人のフェイクで、もっと他の殺害方法、そう例えば毒を使った方法で殺害されたかもしれません」

「つまりこう言いたいわけかい。鶴井は毒かなにかで殺された。部屋の中で鶴井が口にしやすいものに予め毒を仕込んでいた。あとは鶴井が勝手にそれを口にして倒れてくれれば良い。犯人は中に入る必要はない、ってこと?」
作品名:凍てつく虚空 作家名:星屑の仔