D.o.A. ep.44~57
Ep.57 新たな船出
ネイラ海賊団総出によるジャック捜索活動は、夜通し続けられた。
さすがにタフな男ばかりそろっていたので、徹夜でへばる者は皆無だったが、徐々に不安が募っていた。
もしかしたら、激流に呑まれて、とっくにドザエモンなのでは、という危惧である。
結局、散々心配と迷惑をかけたおした青年は、日が昇った頃にひょっこり帰ってきた。
あたたかく迎えられる―――はずもなかった。
「この底抜けのアホンダラがあ!歯ぁ食い縛れ!!」
先輩後輩とわず殴られ、シバかれ、蹴っ飛ばされ、つねられ、罵られ、こってり絞られた。
船から落ちたのは事故だが、今回ばかりは完全に自己責任以外のなにものでもなかった。
ジャックになにひとつ反論の余地は無く、ひたすら謝り倒すしかない。それだけのことをしでかしたのだから。
「―――お前、なんぼみんなに心配かけたら気ィ済むん。ぼくはな?別に?ちっとも心配してんかったけどな」
「はい、…反省してます。ごめんなさい」
「一言足りん。もうこんなコトしません、やろが」
「な、そんくらいで勘弁したれよー」
「反省してるんやし、な、ルド」
「何言うてんねん甘いわ。ココできっちり言うとかんと、このアホまた同じコト繰り返しよるわ」
エルマンにひたすら頭を下げながら、それをティンクやナジカが宥めるという日常が、随分と久しい。
心配なんかしてないと嘯いているが、ジャックはそのお叱りの有り難味をしみじみと噛みしめていた。
叱責には、存外にエネルギーを消費する。
ちっとも心配してない、どうでもいい人間のために、真剣に怒れるものではない。
それでも、とジャックは、罪悪感を抱えつつも。
(―――心配かけて申し訳ないけど、後悔してないです。
最後に、あいつと話せて本当によかった。あのひとときを、俺はきっと一生忘れません)
などと口に出せば、常より何割増しかの説教が更に数倍増しにされそうなので、心の中だけに留めておく。
「みんな、すんませんでした。それと、ありがとうございました。俺、ここにまた帰ってこれて、ホンマに幸せです」
先例に鑑みれば、説教を受けた後の彼は、大抵ぐったりしているか、拗ねて逃げ出すかのどちらかだ。
まさか泣きそうな笑顔で感謝されるとは誰も予想しておらず、一同目を丸くする。
もともとあまり根に持たない男たちだったが、驚きに怒りなど吹っ飛んでしまった。
「ふん…このへんにしといたるわ。これに懲りたらもっと考えて行動するんやな」
「ルド、船長とお嬢にもはよ元気な顔見せにいき。とくにお嬢、首なごして待ってる」
ナジカに肘で頬をぐりぐりとされ、冷やかすような笑いをむけられる。
その表情の意味するところが彼にはわからず、怪訝に首をかしげ、船室へ入った。
「…なあ、あんだけニブかったら、お前にもチャンスある気いすんで、オレ」
「………アイツといるんが、いちばん嬉しそうやろ」
「……!」
なにやらいたく感動したように瞳を輝かせたナジカの額をべしり、とはたき、彼は腰を上げる。
「ぼくかてヒマやないねん。お前も、しょーもないこと喋ってるヒマあったら、働け」
:
:
:
作品名:D.o.A. ep.44~57 作家名:har