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D.o.A. ep.44~57

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流れ落ちる瀑布の音に遮られているが、あの上でライルとレオンハートは命のやり取りを続けているのだろう。
彼はそれが心苦しくてならない。一刻も早くやめてほしい、と願う。
海賊団の大事な姫君をかどわかしてまで、レオンハートは戦いを望んだ。
受けて立ったから、彼らはこうして争っている。
それに、余人の入る余地は、果たしてあるのか。

「…ジャック?」
ネイアがひとたび呼んで、二度、三度繰り返すも、彼は気づかない。
「ジャック=ルド!!」
焦れて胸倉をつかみ、ネイアは怒鳴りつける。

「えっ…な、なんです?」

おどけるでもなく真顔で問われ、彼女は、認めがたい事実を痛感する。
この島にくるまで、ジャックにとって船長とネイアが世界の中心だったはずだ。
再会してからの彼の心は、自分の声に全く注意を払わなくなるほどの誰かが占めている。
そのことが、喉もとを熱くするような苛立ちを湧き上がらせた。
癇癪を起こして、叫びだしたい衝動が彼女の胸を焼く。
自分とそいつと、どっちが大事なのか、そう問い質したい。

「…行けばええやん。 …いろいろ小難し悩むなんて、らしないわ」
けれど、口を突いて出たのは、全く違う言葉になった。

「お嬢…?」
「辛気臭い顔するくらいやったら、…あんたがしたいようにすればええって、ウチは思うよ。
誰に文句言われても…本当にしたいことやったら」
「お嬢……」

ジャックの声が震える。
ネイアは、自分の言葉が彼の迷いを断ったことを悟り、顔を背けた。
彼の表情を直視するのがつらい。もし仮に、いまさら撤回しても遅い。
揺るぎない決意を固めた、彼女が見惚れるような顔つきになっているのだろう。
ジャックはネイアのもとから離れ、彼女が全身全霊で憎み羨む誰かのもとへゆく。
命を捨てることも厭わないほどの健気さを抱いて、行ってしまう。
それを止めることはもうできないし、誰にも止めさせはしない。

「ね、ネイア…行かせて、ええんか、お前…」
娘の気迫から口を挟まずにいたアントニオ船長は、崖上を目指すジャックを見やりつつ恐る恐る訊ねる。
堪えるように目を伏せて、彼女は黙って首肯を返す。
何故、と食い下がる父に、ネイアは口惜しげに笑う。

「…女のカン」



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作品名:D.o.A. ep.44~57 作家名:har