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D.o.A. ep.44~57

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Ep.45 無人島・1日目




「…うん、これでよし」

あらかた汚れの落とせた衣服を目の前に広げ、ライルは満足げに頷いた。
すっかり元通りになったわけではない。血液は落ちにくいものだ。
それでも、何とか着用して平気なくらいにはきれいになった。
適当な樹の枝に引っかける。この気候だから、あっという間に乾くだろう。

川に脚をひたし、満たされた素肌の腹をさする。
ジャックが集めてきたのは、見たこともない木の実と果物だった。
食っている時は夢中だったが、食い終わったころ、正体のわからないものを食べて大丈夫だろうか、などと遅い後悔をした。
美味いかといわれれば美味かった。
けれど、聞けばジャックは、一ヶ月こんな食生活だという。
一ヶ月の食事が、木の実と果物のみ――――
割合豊かな食生活を送ってきたライルには、耐え難い拷問のような事実だった。
可哀想なのと、自分もそんな食事には我慢ならないので、せっかく海があるのだし、明日はがんばって魚を獲ってさばいてやろう。

リノンとティルの、二人は、どうしているのだろう。
幾度となく案じた安否が、ふたたび思考の中心にすえられる。
この、半日といくらかで一回りできる島のどこかにいるとして、ジャックのような先の漂着者と出会えなければ、一人で行動するしかない。
それとも、一人で転移したのは自分だけで、二人は同じ場所に転移されているかもしれない。
その場合、うまくやれてるのかな、なんて心配になる。
まあ、お互い大人であるし、そんなに心配することでもないか、と思い直し、むしろ心配すべきは、二人が大人であるということに気付きかけ―――

「なァ、ライルくん、服乾いたら隠れ家作り、手伝ってくれん?」

覗きこんできたジャックの姿が、ライルに影を落とした。
相変わらず、何が嬉しいのかにこにこ表情にしまりがない。
悩みがなさそうでいいな、と皮肉っぽい感情がわきあがるものの、彼とてライルと同じく、いきなり見知らぬ無人島に流されたのだ。
しかも、一ヶ月を孤独に生きた。
そんなところに、同じ人間が流れ着いてくれたら、嬉しくてたまらないのも当然かもしれない。
空腹を満たし、ライルの心はそれなりに落ち着きかけていた。
脱出したいといくら願おうと、ジャックの言うとおり、自力の脱出は不可能である。
かといって永住の意思は毛ほどもないので、外からの救いを待つしかないのが現実だ。
ならば、とにかく、この島で生き延びること。
それこそが一番大事なのではないか、と考え始めたのである。

「いいよ、このままで。どうせ暑いし、ちょうどいい」
服なぞ着こむ必要はない、とライルは腰を上げる。
金色の獣のせいで、彼がこしらえていた一番目の隠れ家に近寄ることができないため、二番目を造っている最中らしい。
隠れ家といっても、無人島のため、憚る対象もいないわけで、単なる寝床、兼食糧を備蓄しておく場所である。
「そ?助かるわ、こっちこっち」

ライルは、なにやら無性に胸がうずうずした。
彼は、秘密基地を作るとか、探検をするとか、そういう大抵の少年が興じるであろう娯楽に縁のない少年期を過ごしている。
6歳からの10年間は、大半が大人たちとの修練と、家事の習得に費やされた。
自分が選んだ道である。悔いなどない。
だが、男というものは、いくつになっても少年の心を秘めており、ふとした時にそれが顔を覗かせる。
彼とて、例外ではなかった。
隠れ家づくり、というコトに、抗いがたい魅力をおぼえてしまっているのである。
木々の根が複雑に絡み、根元にぽっかりと出来た大きな窪みの建設予定地を見て、よくこんな場所を発見したものだと感心した。
「1番目の場所は、1番お気に入りやってんけどなー」
口惜しげにぼやきながら、枯葉や木の枝を拾っている。あらかじめいくつか候補地を見つけていたらしい。
何しろ秘密基地などつくったことがないため、ジャックの見よう見真似で材料集めにいそしむ。


作品名:D.o.A. ep.44~57 作家名:har