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Ep.54 レオンハート−４−

レオンハートが、頭の中にたたきつけてくるもの。
それは、現実の風景と混線し、ライルの視界や判断を鈍らせた。

――――茨が地平まで敷き詰められた、白黒の野。
剣と爪が交差する。

――――茨にとらわれ、ひとり。
ザザッ。

――――色のない世界で、ひとり。
繰り出されるその爪に翻弄されながら、徐々に追いつめられていく。

――――息をするためだけに存在している、存在するためだけに息をしている、そんないきものがいる。
跳びかかるその体の下をくぐりぬけて、体勢を立て直す。

――――不意にまたたくと、その世界はあざやかに激変した。
ザザザザザ。

――――嵐の跡。赤に斃れる有象無象。ゆれてにごってまわる空。
爪を斬り上げる。しかし、即座に再生。再び振るわれるそれをよけきれず、腕が裂ける。

――――くりかえす、くりかえす。
「あ、…ぎ、う」

――――生きるために、息をするために、くりかえす都度、嵐を広げる。
『理解できないわけではあるまい。…受け容れがたいのだな』

――――白黒の茨の野にもどる。
――――茨にとらわれながら、またひとり。

『貴様も、世界に撒き散らすのは、災厄だけだったと』

ざざざざざざざざざざざざ。
ザーザーザーザーザーザーザーザー。

――――ブツリ。


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