小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

D.o.A. ep.44~57

INDEX|24ページ/55ページ|

次のページ前のページ
 



*******



「…なに、それ?」

ひときわ丁寧にあつかわれながら岩場で組み立てられていくものを見て、その用途に頭をひねる。
背は、ライルより高く、ティルよりは低い。
まるいガラス円卓の上に、とがった棒が貫通していて、てっぺんに至るまでに見たこともないような部品が取りつけられていく。
その部品の角度などをいろいろといじりつつ、得心がいったのか、ようやく訊ね主の方を、作業員たちのうちの一人がふりかえる。
彼はエルマンと呼ばれていた。
「…きみなんかに説明しても、難しいコトは理解できんやろうから、単刀直入にいうと…」
たしか、ジャックに相当ひどい物言いをしていた記憶があるが、彼が嫌いなのではなく、誰に対してもこんなものらしい。

「魔力レーダーってところやな」
「まりょくれえだあ?」
「うわッ、この言い方でもわからんの。ぼく説明すんのメンドくさい、誰かかわって」

そう、心底あきれかえった顔で見捨てられたので、ライルはイヤなヤツだと思った。
苦笑しつつ、丸坊主に鉢巻の、人のよさそうな青年が引き継ぐ。

「つまりなー、これが半径いくらかの周囲に特殊な波をとばして、それが魔力を持った物体にぶつかると、
はね返ってこのアンテナがキャッチして、それがどこらへんにあるかを教えてくれるわけやなー」
「魔力を持った物体…って、人間でも?」
「まあ、なぁー…」
「!」

どうやら運がむいてきたか、とライルは目を輝かせる。
どれだけ足を動かしても見つからなかったリノンも、この装置ならば探し出せるではないか。
ただ、何か奥歯に物がつまったような言い草に、少々の懸念を覚えないでもない。

「なにか、不具合があるっていうのか?」
「不具合っていうか…仕様なんやけどな」

どういう経緯で手に入れたかというと、骨董品オークションで、アントニオ船長がノリと酔った勢いで買ってしまったのだった。
つまり、とにかく古くて、まるで使い物にならない、外見だけは立派なガラクタだった。
その値段たるや、そこそこうまくいっていた家計を、しばらくの間、火の車におちいらせたのである。
娘のネイアは鬼のように怒り狂い、その荒れようはのちのちまで語り草になるほどすさまじかった。
最近、物置に放置されていたのを思い出し、魔道具に強い数人がかりで、なんとかとりあえず使える程度には修理したが、
今のものより精度ははるかに悪く、無機物と人の区別すらできず、目標物の大小さえわからないらしい。

「まあ、最新の魔道具なんか、軍でしかとりあつかえんから、一般に出回ること、まずないけどなー」
彼は年季の入っている円卓部分を撫でながら目を細める。
「これも最新技術として大活躍してた時代もあったんやなーって思うと、なんやいとおしいなるよなあ…。
ほら、この磨り減って塗装がはがれてるとことか、味があってステキやろー」
「あ、うん…」
「宝探しに使えるって気付いたのはなー、人の念がこめられて長いこと経った鉱物には魔力が蓄積されるってわかったからなんや。
財宝ゆうたら、大体宝石やしな」

反応があっても、それが宝石か、人間であるリノンかは判別できないということか、とライルは理解する。
それでも、ノーヒントよりはマシだといえるのではないか、と前向きにとらえることにした。

「そういえば、この島のお宝ってなに? …やっぱりヒミツか」
「んー。俺の一存ではちょっとな。 でも手伝うんやったら、船長が教えてくれはるとおもうよー」
「そっか。―――それにしても、よくこんな辺鄙な孤島に、そんなお宝があるってわかったもんだね」
「ん〜、事前に手に入れとった地図にはな、この辺もっと島があるように描かれとるんやけど…やっぱ古地図なんかあてにならんのかな。でも場所はここで合ってるはずなんやで。ウチの航海士は一流やっでな」


「――――おい、ティンク。そんなんにいつまでも付き合うてるヒマないやろ。ぼくらの仕事、そろそろ準備すんで」
「おー、わかったー」
そんなん、呼ばわりされていることに関しては物申したくもあったが、彼らの邪魔をするのも忍びない。
礼を言って、その場を離れる。

宝探しを手伝わないか、とアントニオ船長から誘われたが、ライルはどちらかというと、消極的だ。
行きたくない、というよりは、やめておいたほうがいいんじゃないの、と彼らに中止をうながしたい気持ちであった。
この孤島に略奪のために来たような連中が、あの冷徹で凶暴な獣の癇に障らないはずがない。
ライルは理不尽に殺されかけたのに、彼らはわざわざ怒りを買いにいくのだ。
なんてばかばかしいのだろうと、歯がゆい思いだった。
自分の領域を踏み荒らされる獣の怒りと、宝石のたぐいへの物欲を比して、後者に理があるとは到底思えない。
彼はリノンさえ見つかればそれでよく、財宝には関心がないから、なおさらにそう感じるのかもしれなかったが。

けれども、人間と無機物の区別ができない以上、やはりそこへ行ってみるしかない現実もある。
そして、自分の想いは手前勝手な理屈で、危地に飛び込むために準備してきた彼らを止める権利がないのも、わかっていた。

願わくは、どうか装置の反応が、できるだけあの獣のすみかと遠ければいい。
そう、都合よくいかないことは、百も承知だったが。


作品名:D.o.A. ep.44~57 作家名:har