D.o.A. ep.44~57
Ep.50 獅子の島
大きな木箱を運び終えて、ジャックはしたたり落ちる汗を乱暴にぬぐう。
みなも、荷下ろしをひと段落すませ、おのおの自由に休みをとって雑談を交わしていた。
そうすると、奇跡のように再会できたジャックが、話題の中心となっていくのは必然といえよう。
「え!ほなら、この近海をとおったの、この島目当てやったっちゅうことですか!」
なんたる偶然。この島に流れ着いたのは、もはや運命めいたものに感じられた。
さる筋によれば、この島には、たいそう値打ちのあるお宝がある、とのことらしい。
したっぱとはいえ、お宝と聞けば、根っからの海賊であるジャックには胸おどるものがあった。
けれど、あの黄金の毛並みの獣が脳裏をかすめ、そう手放しにわくわくできる心境にもなれない。
手負いのあれの領域に、よそものである大人数がのさばり歩き、好き放題に荒らしていく。
その行為が、いかにあれの心に波風立てるか、想像するまでもなく大嵐のレベルであろう。
レオンハート―――ジャックとしてはいまだ馴染まない名だが―――あの美しい獣の平穏を、壊したくない、と願っていた。
船を見たとき、まず一番になにを思ったかといえば、みずからが助かるというよろこびではない。
もうこれ以上、あれのテリトリーを侵さずにすむという、罪悪感からくる安堵だったのだ。
できるだけ、この島の奥へは立ち入らないよう生活してきた。
レオンハートは、きっと奥にいる。
そして、その財宝もきっと、奥にあるのだろう。
「……? どないしたんやろ。宝探しやーわーい、って、いつものルドやったら、アホみたいにさわいどるやん」
「さあ………。 この島でわるいモンでもひろって食べたんちゃうか」
悶々となやんで浮かない表情をしながら空を見つめるジャックに、一同、いぶかしげにささやきあった。
作品名:D.o.A. ep.44~57 作家名:har