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D.o.A. ep.44~57

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Ep.49 遠い海から来た人々




「ーい、…くん」

ぼんやりとしたさざなみの音の中、誰かがしきりに肩をゆすっている。

「…起きーい、朝ですよー、船、きとるよー」
「―――――!」

寝ぼけた頭がその言葉で覚醒し、がばっと顔を上げる。
三角座りのひざに額をうめて眠っていたせいで、痛む節々の重みを噛み殺し、腰を上げた。
波打ち際に走り寄って、水平線に目をすがめる。
気温はあいかわらず高いが、太陽はまだ昇りかけで、彼方は薄靄がかかったようだ。
そして、肝心の船影をその霧の中に見出そうと、より一層双眸を細めた。
180度の視界に目をさまよわせてそれを探す。が、影も形もありはしなかった。
「……おはよ」
抗議するような目つきでジャックを見上げると、
「いやいや、そんな目で見んといてッ、ウソちゃうって! キミが寝てたあいだに、ティルくんが見に行ってくれとるんや」
「ティルが…」
確かに、彼の姿もどこにも見当たらない。
「この浜辺には停泊せなんだけど、間違いなくこの島のどこかには船をつけとるよ。安心しい」
「ならいいけど…」
船を着けたということは、こちらが焚いた煙がちゃんと確認できたということであろう。
助ける気がなければ向かってくるはずがないので、善意の人間が乗った船だと期待しても、楽観的ではあるまい。
それにしても、昨夜は船であるかどうかさえわからなかったのに、こうもうまくきてくれるとは、まったくもって幸運だった。
この、物事をポジティブにしか考えられないような青年がいなければ、船など一生来なかったかもしれない、などと感謝するのは、買いかぶりだろうか。

「そろそろ帰ってくる頃とちゃうかいなー……」
などと、あくびと背伸びをくりかえすこと数度。ようやく長弓を背負った長身が姿を見せる。
ライルとしては、昨晩あれだけいさかいのあった相手だけあって、今までで一番目を合わせづらい。
彼のほうはどう思っているのか、特に挨拶もなく淡々と見てきたことを語る。
かなり大型の木造船が、一隻停泊しているとのことだった。
今、人員や荷物などを降ろしている最中であるらしい。
ん?とジャックと顔を見合わせる。求めに応じてたどりついたのなら、荷など降ろす必要がないのでは、と思ったからだ。
まあそんなことは、ここで悩んでも答えが出るはずもなし、とにかくその船のところまで一同向かってみることになった。

助かるかもしれないという高揚感に、ある気がかりが影を差す。
これだけ探したが、もし万が一、この島にリノンがいたとしたら。
その可能性が明確に否定されない限り、救いの手が差し伸べられたとしても、ライルはこの島を出るわけにはいかないのだ。

けれど、もしかしたら、とありえない夢想にとらわれかける。
目指す船には、すでにリノンが救出され、乗っているのではないか、と。







作品名:D.o.A. ep.44~57 作家名:har