D.o.A. ep.44~57
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「…あ、夕飯、作んないと」
とっぷり暮れてしまった空を仰いで、ぼんやりとつぶやいた。
あまりの成果の上がらなさに、何もしたくないほど無気力な気分だったが、そうもいくまい。
とぼとぼと、隠れ家に歩を進めていると、海岸に誰かがたたずんでいるのが目に入る。
「…ッ」
ザザン、と波が行き来する音だけの砂浜を蹴る。
その姿が近付くにつれ明らかになり、ライルは落胆した。
女の背丈と体格ではない。
今までどう頑張っても見つからなかったリノンと、こうも簡単に出会えるはずがなかった。
髪は短く、うすい色で、広い肩から長い腕が伸びている。
手にあるのは長弓。
後ろ姿からでも誰なのかは、明白だ。
気付いていないはずはないのに、振り返らないその男は、ひたすら海の彼方を凝視していた。
作品名:D.o.A. ep.44~57 作家名:har