D.o.A. ep.44~57
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『―――きれいな色だ』
ある日、小さな村にやってきた、新しい住人。
村中から尊敬されていた神父様に連れられてきた、その年上の女の子は、人目を惹く色を持っていた。
あざやかな新緑のような色彩の、長い髪。
そして、その爽やかな緑に反して、いつも沈んだ、悲しそうな表情をしてうつむいていた。
女の子は、リノン=ミラファードという名前であることを、大人たちの立ち話で偶然知る。
話しかける勇気はなかったので、遠くから見ていた。
幼い自分の目から見ても、少女は可愛らしい顔立ちをしていたので、笑ったらいいのに、といつも思っていた。
『仲良くなりたいの?』と、姉は言った。
話したこともないような奴に、いきなり仲良くなりたいと思われるなんて、気持ち悪いんじゃないか。
きっとむこうは、自分のことなんて知りもしないだろう。
『かわいいライ。そんな悲しいことを言わないで。勇気を出して。だいじょうぶ。
その気持ちが嬉しくない人なんて、いない』
――――ああ。
なぜ、顔を思い出せないのだろう。
姉の言葉を真に受けた自分は、まるで預言をもらった信者のようだった。
ベッドから出られないのに、たくさん物を知っていて、自分の絶対的な味方だったので、その表現は的を射ているだろう。
言われたことに間違いなど何もないと信じて、暗闇が明けたような気持ちでいっぱいになった。
嬉しいと思ってもらえたら、彼女は、見せたことのない笑顔を、自分に向けてくれるだろうか。
とはいえ、他人とかかわったことがあまりないので、なんと最初に話しかけたらいいのか思いつかない。
ただ、一目見たときに浮かんだ気持ちを、彼女を目前にして、あらためていだいた。
だから、感じたままのことを、そっと言葉にした。
『―――きれいな色の、髪だ』
彼女は、笑わなかった。
それどころか、その茶色の瞳に、じわじわと涙がわき上がり、流れ落ちた。
よくわからないが、とんでもないことを言ってしまったのだと、背筋が凍った。
呼吸さえうまくできなくなるほどの衝撃を受けて、数歩後退りし、脱兎のごとく逃げ出した。
作品名:D.o.A. ep.44~57 作家名:har