D.o.A. ep.44~57
「……ひさ、しぶり」
そして、たたずむ長身に、おずおずとぎごちなく声をかけた。
相変わらずの仏頂面は、ライルを一見すると、小さくうなずいた。
話したいコトは山とある。
流れ出ないのは、話すべきことが多すぎるからか、うまく言葉にできないからか。
ある種、獣と対峙していた時よりも、空気が張りつめている気がしなくもなかった。
しかし、いつまでも沈黙を保っているわけにもいかない。
思い切りは、ライルの方が早かった。
「リノンは、一緒じゃないのか?」
「…ああ…一人だ」
「…そうか」
応酬が途切れる。おどろくほど短い。
自分は、こんなに口を動かすのが苦手だったろうか。
目をせわしなく泳がせながら、あらためてリノンの存在がかけがえないと気付いた。
彼女がいたら、三人で、なんとか情報交換も進むだろうに。
三人、と考えて、はたとジャックの顔が浮かび上がってきた。
思わず、ティルの上着の袖をつまむ。
「…?」
「あ、あの。一人じゃないんだ、俺」
「それは、」
「つまり…先に流れ着いてたヤツがいて、そいつと一緒にいた…わけで」
「…そうか」
「昨日は、そいつと…隠れ家つくってた」
「……」
「…お前も、…来ないかなって」
来ないかも何も、極々少数の漂着者が、わざわざ拠点をばらつかせるのは得策ではない。
至極当然の判断として、ティルはその誘いに応じた。
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ライルとティルは、ジャックの待つ隠れ家へと向かう。
終始無言で、自然無心になりつつ、ひたすら足を前へと突き出し続けていた。
やはり、明かりがないのとあるのでは、歩調も歩幅も違う。
そのおかげか、なんとか、夜明け前までには戻ることができた。
ちなみに、第2の漂着者に出くわしたジャックの第一声は、「耳、長ッ?!」であった。
作品名:D.o.A. ep.44~57 作家名:har