少年少女の×××
「……これは……家か?」
そこは家というよりおもちゃ箱をひっくり返したような、雑多した、複雑で、雑然したデザインの城だった。いくら街中からかなり離れているとは言え、こんな奇抜すぎるデザインの家は佚は初めて見た。
確かに沢山の種族が混在するこの世では芸術や美術に関しては様々な感性がある。それは沢山の芸術作品からも見てとれる。だが、社会的にも日常的にも私有し、生活する【家】であるこのデザインはあまり見ることはない。沢山の種族がいるとしても、やはり他の目を気にする者は多くいる。
そして、ついでに言うならばサイズが蓮達の標準の三倍はある。
「何や?巨人族なんか?」
「違うー…えいっ!」
と、いつまにか持っているなんかしらの棒で必死にインターホンを押そうとしている。
「たくっ……標準用のもつけろって言ってんのに……」
ぶつぶついいながらぺしぺしと押そうとしているがなぜだか外れる。
「あー俺がやろか?」
「できる?」
佚は任せろ、と軽く距離とタイミングを計り、ピョンっと軽い効果音とは反比例し、強い脚力で高いインターホンに軽々と届きインターホンを押した。だが……
ビビビビビビビビビビビビビビビ!!!
「いっ……!!?」
つんざくような警報音に気をとられ、着地に失敗した。
「あがっ!!」
わかっていたのか耳を塞ぎながら蓮がやって来たが、その間に音は止んだ。続いて大きな門がギギギッと今にも倒れそうな音を出しながらひとりでに開いた。中に入れば、中も中で奇抜なデザインの置物や壁の模様がたくさんある。
「な……なんやお化け屋敷みたいやな……」
「趣味が変わってるんだ。どこから集めてくるんだか聞きたくもないけど」
すたすたと見知っている蓮は奥へ奥へと進んでいく。そして、ある扉の前で止まった。なんとか届くドアノブの下部分を掴み、扉を開けた。
「待ち人来たり。ってかぁ?」
開けた途端、馬鹿にしたような声が聞こえた。そして、その声の主は部屋の真ん中に置いてある巨大な座椅子に寝転んでいた。佚はその時すべてがわかった。祈祷資格のない祈祷士、満月ではなく新月の日を選ぶ、そしてこんな町外れに住んでいるという、すべてのキーワードとがその声の主の存在すべてに理由があると。
「歓迎してやるよ。我が友人どのに我が友人どのの友人どのの犬っころ」
その祈祷士は巨大な悪魔だった。