ビッグミリオン
複雑な表情を浮かべたまま唇をかむと、紫苑は黙り込んでしまった。この父親と息子にどのような確執があったのかは、この時点で俺たちには知る由もなかった。
「所長。実はもうひとり後から到着する人物がいます。名前はブライアン。彼が着いたら私にすぐ連絡を頂きたいのですが」
リーマンの言葉に所長は快く頷いた。
「ええ、連絡は受けています。部下の女性を一人連れてくると言っていましたが……。そうそう、大事な事を言い忘れていました。この研究が成功して満足した結果が出た場合、現金か小切手で千四百万ドルをお支払い願います。その代わり、どの血液型にでも対応するワクチンを大量に作りますので。どうです? あなたたちの命の値段と考えたら安いものでしょう?」
所長はモヒカンとリンダを交互に見ながら、さりげなく言った。ひょっとしたら、カジノでジャックポットを当てた事をテレビで見て知っていたのかもしれない。