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かざぐるま
かざぐるま
novelistID. 45528
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ビッグミリオン

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 三十分後

 病院に向かう為、車三台に分乗した一行は、片側一車線の交差点に差し掛かった。先頭の酒臭いセダンに乗っていたパクと部下三名は、前方の道路に何か横たわっている物があるのに気付いた。スピードを落とすと、大型トレーラーが横転していて道を塞いでいる。
 後方のヤンの乗った車両ではトッドとニックが、じりじりしながら作戦開始の合図を待っていた。そして、前方のパクの乗ったセダンのバックランプが点灯した瞬間!
「ぽんっ!」という間の抜けた音と共に、強烈な光が辺りを包んだ。
 停止した三台に向けて、道の両脇のアパートから六個のスタングレネード(音響閃光弾)が投げ込まれた。
 二人はとっさに目を固く閉じ、耳を塞いだ。訓練で嫌になるほど聞いた音だ。
「キイイイイイイン!」
 耳を塞いだにも関わらず、軽く耳鳴りがする。彼ら以外の車内の人間はこれから数秒間身動きがとれないだろう。
 後部座席にいたトッドが運転手のヤンの首に手を回すと、助手席にいたニックがすばやくヤンを拘束した。ヤンは完全に視界を奪われ、抵抗する暇も無かった。
「何をするんだ! お前ら一体何者なんだ!」
 耳をやられているせいか、声が異常にでかい。
「あなたには黙秘権がある――」
 おなじみのミランダ警告をニックが大声で読み上げたが、きっと彼の耳には届いていないだろう。
 前方ではスタングレネード投入と同時に、〈中国人民武装警察部隊〉が車の窓ガラスを割って突入していた。パクは逮捕の際、隊員たちと格闘になり強烈に暴れたが、足を撃たれた後は傷を押さえながらおとなしく拘束されていた。
 最後尾の車に乗っていたホンファは目をつぶったまま車から飛び出し逃げようとしたが、チャイナ服が仇となったのか、つんのめるように激しく転んでしまった。拘束時に中国語で何か汚い言葉で罵っていたようだったが、ニックたちには何を言っているのかよく分からなかった。
 ヤンとホンファ、それにパクとその一味は、手錠で繋がれ護送車に手荒く詰め込まれた。中国人民武装警察部隊の隊長がトッドに近づき、短く握手を交わす。
 警察車両が交差点を取り囲み、回転灯が辺りをちかちか照らしている。
「ご協力ありがとうございました。さて、アルミケースが二つありますがこれはどうしますか? これの持ち主の会社は『自由にしていい』と言っていましたが」
 トッドはいたずらっ子のような眼をしながら隊長に聞いてみた。
「こういうのはどうでしょう。これは我が国で没収しますが、犯人の身柄を即刻アメリカに引き渡します。本来の手続きと少々異なりますが、ことテロにおいては早急に情報を引き出したいでしょう?」   
 流暢な英語で隊長が提案した。案としては妥当な線だとはっきりとその顔にも書いてある。
 トッドとニックはにこりと笑い、もう一度隊長と今度は固く握手を交わした。

 これで『チーム1』と『チーム10』も、早々にチャレンジから脱落した。
作品名:ビッグミリオン 作家名:かざぐるま