RPG!!
初めて爽快に笑った。
「面白ぇ! 武器商人には興味あったし、村の商いにも限界を感じてたしな。」
魔物の大量出現による商業ギルドの遅延。
オーロは前々から村の外での商売を視野に入れてたし、興味があった。
聖剣はそれを見抜いてた。
世界進出には地道な努力の積み重ね。こんなこと言えるのは世界に興味がある奴だけだ。
「交渉成立だ。束の間だけ勇者になってやるよ。」
ニイッと、オーロは承諾。
聖剣は胸を撫で下ろすように、溜まった息を吐いた。
口など無いが。
「やったな。剣の字ィ! いやぁ〜、あっしも鼻が高いってもんでさ!」
「貴様に鼻は無いだろ!」
「いや、お前もな聖剣。
でも、抜けんのか? こういうのって、お決まりじゃ選ばれし者しか抜けないって設定じゃ……」
オーロが尋ねると、剣は快活に答える。
「はっはっは! 大丈夫。幾多の勇者がこの剣抜いたから、もうこの岩ガバガバなのさ!」
「やめてっ! ガバガバって表現なんか卑猥でぇ!」
「そこらへん雑なんだな。売れんのかマジで。」
「オーロよ! 我は聖剣だぞ!
腐っても鯛、錆びても聖剣! これ即ち人気者!」
「腐った鯛は人気ねーよ。」
半信半疑でオーロは聖剣の持ち手部分を握る。
「うわ、濡れてる。きもっ!」
「きもくない! さっき汗かいたからな。」
「なお、きもいわ。」
「代謝が良いんでぇ剣の字は。ちなみにあっしは昨日から便秘よぉ!」
「岩、今更だが我の事を剣の字と呼ぶな。」
「あっ、ごめん!」
というか、どうやって岩が排便するんだ?
柄の部位に力を入れ、薬草を引き抜くようにオーロは聖剣を引き抜いた。
本当に岩盤の亀裂は緩くなっており、いとも容易く引っこ抜けた。
「……お前、本当は大根じゃねーのか?」
「大根!? 貴様、我が大根役者だと言いたいのか。」
「大根でも役者でもねーだろが!」
オーロの両手には聖剣。
すると、オーロの体が光を放ち始める。
「なんだ? この光は!」
「お前が、新しい勇者に選ばれたという証だ。」
「なに!? じゃあ、俺光っぱなしなの!?」
「光はすぐ消えるから安心せい。ただ---」
「ただ?」
「代謝が良くなる。」
「なんだその効果!?」
徐々に光度が落ち着き始めた。
風で騒がしかった木々は、静寂を帯びている。
もう陽が沈みかけていた。
「改めて、だ。」
聖剣は告げる。
「オーロ・マーチャンターよ。卿を今から我が主とし、勇者として我を振るう権限を卿に継承する。
我が名はカリブルヌス。」
カリブルヌス。
これが聖剣の名。
「短い間だけど、どーぞよろしく。」
オーロは渋々返すと、力無く笑った。
名前ややこしいな。
こうして、
大商人の夢を持つ勇者・オーロと
奇妙な聖剣・カリブルヌスとの
世界を救う物語が幕を開けるのであった。