RPG!!
剣と岩が無機質漫才を始める。
オーロは、何はともあれ聖剣に話し相手ができた事に一安心し、村へ帰るのだった。
「いや、帰さないよ!
もうこうなったら意地だ! 我を抜くまで帰さない!」
こんな、わがままな聖剣が存在してもいいのだろうか。
オーロは気の毒になってくる。
「何百年、聖剣が孤独で---」
「いや、あっしもいるぜぃ!」
「黙れ岩。聖剣が孤独で、悩んで寂しかった気持ちはわからん。だが俺だったら耐えられない。」
真剣な顔で彼は、聖剣のそばに歩み寄り屈む。
耐えられない。
何百年も自分の使命を果たそうと、一人ぼっちで動けず同じ風景を眺めるなんて。
しかも、剣という物質であるために、命を絶えず続く永遠の孤独に耐えられる自信など無い
「だけど、だからこそ、俺みたいに商人目指してる人間より、相応しい人間を待つべきじゃねーのか?
言っとくが俺は剣の腕はからきしだし、戦いなんざ虫より嫌いだ。無駄だ。興味が無い。」
世界の存亡を委ねる相手を
世界の生存を託す戦士を
世界の平和を守る者を
「そんな適当に選ぶ程、世界は安くねーよ。そう思わないか?」
「……」
聖剣は沈黙を喫した。
岩からは何故か嗚咽が聞こえる。
「安心しろよ。若い連中が良いってんなら、俺が村の若い腕自慢にここに来るよう伝えとくからさ。」
争いは嫌いだ
戦いは嫌いだ
暴力は嫌いだ
怪我は嫌いだ
何が悪い。そんなステージを回避したところで、人生不幸にはならない。
オーロの夢は、魔人だろうが、天使だろうが、神だろうが、魔王だろうが、どんな相手でも交渉し商売することだった。
聖剣は無い目で、青年の瞳の奥に燃える魂を垣間見た気がした。
いや、気ではない。はっきりと感じた。
今まで勇猛果敢な勇者達と組んできたが、こんなタイプの人間を見た事がない。
戦いが嫌いな人間らしい人間。
人生を損得勘定で考える人間らしい人間。
世界は安くない?
お前は世界ですら勘定に入れているのか?