RPG!!
「魔王か〜。お、レアリーフ見っけ!」
「緊迫感を出して欲しいと切に願う。」
「だってさ、魔王って言ったって今、6人いるじゃねーか。1人増えたところで俺には関係ありませんよっと。」
オーロは、薬草を引っこ抜きながら呟く。
「いやいやいや、7人目やばいから。もう超やばいからね。」
「お前、ほんとに聖剣?」
「大体、昔の時代を知らんから、お前はそんなこと言えるのだよオーロ。」
「ジジイみてーなことを……ん?」
オーロは思わず作業の手を止める。
屈む体勢からすっと立ち上がり剣を睨んだ。
「なんで、俺の名前を知ってんだ?」
手に持ってた薬草一束を背中の籠に投げ入れた。
「ふふん……聖剣にやれない事はない。少し風に聞いたのさ。」
「……くさっ!」
「はぅわっ!? 今、聖剣バカにしたな! もう勇者にしてあげないぞ!」
「ガキか。もういいや薬草は。」
彼は手のひらにこびりついた土を叩き落とす。伸びをすると眩しい木漏れ日に目を細めた。
年に似つかわない綺麗な灰色の髪をかき上げると、来た道の方向に向いた。
「じゃーなー。また来るよ。」
「ちょいちょいちょい! じゃーなー、じゃねーよ! 嘘だから! 勇者にしてあげないなんて、おじさんの嘘だから!
頼むから! 土下座できるなら今すぐ土下座したい!」
激しく謝罪を述べた錆びた聖剣に最早、格などミクロも無いようで。
オーロはめんどくさそうに振り向く。
「嫌だって。お前抜いたら勇者なんだろ? 俺、大商人になりたいもん。だから、抜かん。
大丈夫、時々話し相手になってやるから。」
「お前は孫か! もう、お前しかいないのだ! 察しろ!」
「供えモンはおにぎりでOK?」
「我は地蔵か!」
のらりくらりとかわすオーロに、聖剣は喰らいつく。
ここまでやってくる若い者はオーロが初めてだったからだ。来るとしても、健康のために仲良く歩く老夫婦くらい。
「やい、てめぇ! こんなに、剣の字が頼み込んでるってのに、それでも赤ぇ血は流れてんのか! てやんでぇ!」
「……誰?」
「この剣の字に刺されてる岩でぃ!」
とうとう、黒く重厚な岩も喋り始めた。
「この岩、喋れんのかよ。 ファンタジー何でもありだと思うなよ!」
「るせぇ! こちとら、剣の字と何百年ルームシェアして来てると思ってんだ! 言葉くらい覚えるってんだ!」
「ルームじゃなくて滝つぼだけどな。」
「えええ!? おまっ、喋れたの!?」
「聖剣、岩喋れるの知らねーんじゃねぇか!」
聖剣が嫌な汗をかいている。
汗かくんだ、剣って。オーロは冷静に観察していると、岩は飛ぶ鳥を落とす勢いで喋り始めた。
「いや、だって、剣の字の旦那。何百年も孤独に迷って悩んで苦しんでたしよ……正直、剣の字と呼ぶのも初めてで緊張してます。」
「そりゃそうだろうな! だったら、話し相手になってくれれば良かったのに!」
「……はっ!?」
「今、気づいたんかい!」