RPG!!
「ん? なんだ息子よ今日はやけに遅かったじゃないか。」
『星くず屋』の入り口扉をあけると、カランコロンと、軽いベルの音が歓迎してくれた。
受付のカウンターには、丸めがねをかけた老紳士が一人葉巻をふかしている。
「ただいま。……また煙草かよ。って葉巻!?」
「そうだ。どうだダンディーでしょうよ?」
「いや。甘い煙を漂わせるおっさんだ。」
「それがダンディーだ。」
「なら、ダンディーだわ。」
よっ、と大量の薬草が収納されている籠を、カウンター裏に置く。
その取れ高にオーロの父は力無く笑った。
「まーた、ヤクかよ。」
「その訳し方やめろ。危ない人になっちゃう。」
「おっ、訳(ヤク)だけにか?」
「つまらん。あと葉巻吸うんじゃねぇ。」
「吸っていないさ。燻らせてるのさ。」
ダンディーだろ? オーロの父は自然にウインクすると、オーロの手にある風格錆びれた聖剣に気づく。
「お前……それは!」
打って変わって、目を見開いた。
オーロが経緯を説明しようとした瞬間だった。
「ふっ、我の覇気故に沈黙していたのにも関わらず気づかれてしまったのか。聖剣は辛いよ。」
「男はつらいよ的な感じで使ってんじゃねぇよ。」
覇気ゼロだよお前は。誰も気絶しねーよ。
オーロが肘鉄砲ツッコミを放とうとした時だった。
「ダンディー!」
オーロパパの血が騒いだ。
「喋るのか? てか今喋ったな? 喋るんだな!?」
「あ、ああ。我は聖―――」
「素晴らしい! 伝説の中の伝説。古の神話。神々の英知! それが今、私の目の前で! しかも息子が!」
若干、オーロも引いていた。
こんな親父を見るのは生まれて初めてだった。
「おいオーロ! 君はどこでそれを見つけた!?」
「い、岩に刺さってた。」
「ダンディー! 伝説的神話的、ロマン&ジャスティス!」
「もう訳わかんねーよ。こんな親父みたくなかったよ。」
「ドンマイ、オーロ。」
まさか、カリバーに慰められるとは。
「人語を語る武具。まさに、七の神器、通称『七武式(ななふしぎ)』! お前も聞いたことはあるだろう? オーロ。」
「ああ。あれな。昔、俺を寝かしつけるために、聞かせてくれた親父の御伽噺だろ?」
「御伽ではない! あれは世界の真実であり、真理であり、真相だ。つまりダンディー!」
「つまりの使い方!?」
「今、目の前にある剣。それは『七武式』の1つに間違いない。」
丸めがねをくいっと上げて、にいっと笑う。
カリバーも圧倒されていた。
オーロは急いでカーテンを閉めた。
「和の国の伝承にもある。魔導でも機導でも解明されてない謎の武器。その武器には強大な力が秘められているという。」
「強大な力?」
「継承されている一説によれば……
未来を透視する力。
竜の如き破壊力を得る力。
生物を従わせる力。
そして……代謝を良くする力……!」
「最後! 最後のそれだわ! しょぼ! 他のかっこいい!」
オーロはカリバーを睨んだ。
「てへぺろ」とカリバーは棒読みをする。万力に挟んでやろうかと思った。