何度でも、あなたに恋をする~後宮悲歌~【完全版】
「私を抱いてください。義禁府で殿下は、あの口づけの続きは後の愉しみに取っておこうとおっしゃいましたね。だから、今、ここで」
「だが、明姫。そなた、身体の方は大丈夫なのか?」
自分はきっと明姫を烈しく求めることになるだろう。まだ漸く健康を取り戻したばかりで、心配はないのか。
ユンの不安を見通したかのように、明姫は笑う。
「私なら大丈夫です。何度も言わせないで下さい。これでも私の方からお願いするのは、かなりの勇気が要るんですから」
「そなたは最後まで可愛いことを言うな」
ユンが明姫を強く引き寄せた。狂おしく唇を合わせながら、待つのももどかしいと言いたげに彼女の上衣の紐を解いてゆく。その下の下着も取れば、後は胸に布を巻いただけの姿になる。その布をするすると解きながら、ユンは唇を明姫の身体に次々と落としてゆく。
唇から首筋へ、鎖骨を経て豊かな胸の谷間へと。十月下旬の夜はもうかなり冷え込むが、露わになった乳房の先端がくっきりと立ち上がったのは、何も寒さのせいだけではない。
ユンに数え切れないほど抱かれた身体は、もう以前の明姫のものではない。何も知らなかった無垢な少女から男の愛撫を受けることに慣れた女の身体へと作り替えられた。
ユンに見つめられていると思うだけで、明姫の身体は敏感に反応する。まろやかな乳房の先端は固く尖り、男に触れられるのを待っている。すんんなりと伸びた両脚の狭間は、やがて逞しい彼自身を受け容れる瞬間を待ちわび、しっとりと蜜を潤わせている。
ユンは明姫を焦らすように、丹念に唇で素肌をなぞってゆく。時にはきつく吸い上げ、鬱血の跡を残す。殊に今夜は首筋から鎖骨、乳房から臍のくぼみまで、あちこちを吸い上げ、紅い花びらのようなアザを残していった。
それはあたかも明姫は未来永劫、自分のものだとその白い身体に所有の徴(しるし)を刻み込んでいるようでもあった。
「あっ」
ユンの口がすっぽりと乳房の突起を銜えた刹那、明姫の唇から喘ぎ声が洩れた。待ち望んでいた身体は歓び、大きな乳房が欲望を感じて更に重くなる。
乳房を丹念に吸いながらも、彼の愛撫は止まず、空いた方の手は既に十分に潤った狭間へ伸びていった。
「うっ、ああっ、あっ」
数本の指を同時に秘口から付き入れられ、抽送されながら、口では乳輪ごと吸われる。そのあまりの快感に、明姫は嬌声を堪え切れない。しかし、部屋の外にいるヒャンダンや女官たちにこの声を聞かれるのはあまりに恥ずかしい。
明姫は自分の手で声を洩らすまいと口を覆った。そんな明姫のささやかな努力に挑むかのように、ユンの愛撫はますます烈しくなった。
舌で突起を捏ね回され、数本の指を何度も秘口に抜き差しされている中に、明姫はいつのあの感覚が湧き上がってくるのを感じた。
そう、身体の芯からうねってくるような、あの妖しい感覚。まるで天の高みから地上へと一挙に堕とされていくかのような。
「ああっー」
ひときわ高い声を上げた明姫の唇をユンが素早く塞いだ。愛撫を止められて放り出されて物足りなくなっている乳房をやわらかく何度か揉むと、明姫の両脚を抱え上げ、肩に乗せる。彼女の身体をくの字になるように深く折りたたむ格好で、既に隆と勃ち上がったそれを突き立て彼女の中にひと息で入った。
最も深く彼を受け容れる体勢だ。既に先刻、指の愛撫だけで一度、絶頂を迎えている。極まってまもない身体は再び高みに押し上げられ、明姫はまたしても二度目の絶頂を迎えた。
内奥で彼自身が膨らみ、熱い飛沫が撒き散らされるのがありありと判った。彼の放つ液が複雑に入り組んだ奥壁の襞に滲み込んでゆくのも気持ちが良い。
あまりに快感が過ぎて、もう、本当にどうにかなってしまいそうだ。
「殿下」
涙の滲んだ瞳で訴えかけると、ユンは笑った。
「今夜は初めてそなたから誘ってきたんだ。これくらいで済むと思うなよ?」
ユンは不敵に笑い、今度は明姫の華奢な身体を抱き起こし、小さな子どもを抱っこするように向かい合わせで膝に乗せた。
「殿下、何を―」
不安げな明姫が怯えた瞳で縋るように見上げると、艶っぽい笑みで応えた。
「そのような顔をするな。そんな可愛い顔で見つめられれば、男は余計にその気になる」
ユンは明姫を抱えたまま立ち上がる。丁度、彼女は両脚でユンの身体を挟んだ形になっている。
ともすれば力の入らない身体が滑り落ちそうになる。そのため、明姫は懸命にユンの腰に回した両脚に力をこめた。それで、二人の繋がりは深くなり、よりいっそう彼を奥深く受け容れることになってしまう。ユンは彼自身をひとたび明姫の蜜壺から引き抜いた。
ユンの剛直はまだ、少しも勢いを失っていない。むしろ、つい今し方、明姫の中で果てたとは信じられないくらい立派に戻っている。
猛り立ったそれが明姫の秘所に押し当てられる。既に二度極まったそこは、明姫自身の蜜なのかユンの放った液なのか判別がつかない愛液にまみれていて、大きなユンを難なく受け容れた。
「待って、チョ―」
呼びかけた明姫の声がそこで途切れた。
「―!」
今度もまたひと突きで最奥まで刺し貫かれる。
「あー、あぁっ」
背中を仰け反らせる明姫の後ろに手を添え、ユンはゆっくりと動いた。あるときは腰を回し、あるときは抜け出てしまいそうなほど引き抜き、また最奥まで串刺しにする。
「ゆる―して」
二度目の体勢もかなりの深さで彼を受け容れることになるが、あれは初めてではなかった。だが、今回のような抱かれ方をしたのは初めてのことだ。
これ以上、深く繋がることはないのではと思うくらい彼を奥深くで感じ、受け容れていた。また熱い飛沫がビュクビュクと弾け、彼女の膣壁を濡らしていく。
立て続けに三度の絶頂を迎えた身体は、もう限界をはるかに超えていた。
「あぁ」
明姫はあえかな吐息混じりの声を上げたきり、あまりに烈しい情交に意識を失った。
翌朝、めざめたときには、ユンは既に隣にはいなかった。昨夜の彼は殊に狂おしかった。時間にすれば、さして長いものではなかったと思う。しかし、わずかな間に続けざまに抱かれ、三度の絶頂を迎えてしまった。
裸のまま眠ってしまったはずなのに、今朝起きた時、明姫はちゃんと夜着を着ていた。ヒャンダンが少し頬を染めて教えてくれたところによれば、気を失った明姫の身体を清潔な布で清め、夜着を着せたのはユン自身らしい。
「殿下は夜明けに大殿にお帰りになられました」
まだ何も知らないらしいヒャンダンは頬を赤らめたまま言った。
「そう」
明姫は頷き、まだ仕上げていない刺繍を眺めた。昨夜、刺繍をしていたら、ユンが来たのだ。刺繍は額に填ったままで、部屋の片隅に立てかけてある。
昨夜はあれほど華やかに見えた二匹の蝶と桔梗が一夜明けた今では、どこか物哀しく見えた。
最後に顔を見ることも叶わなかった。でも、きっと、これで良いのだ。名残はどれだけ一緒にいたとしても、尽きることはないだろう。それに、顔を見れば、余計に辛くなるだけ。ならば、このまま顔を見ずに別れた方が良い。
そう思う傍ら、?さよなら?も言わずに彼の許を去ってゆくのかと考えると、涙が溢れて止まらなかった。
作品名:何度でも、あなたに恋をする~後宮悲歌~【完全版】 作家名:東 めぐみ