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何度でも、あなたに恋をする~後宮悲歌~【完全版】

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 刹那、明姫の意識が唐突に目覚めた。自分は今、どんな格好をしている? わずかに身を起こしてみれば、何とこれ以上は開けないほど両脚を開き、その間にユンの頭が埋まっている。
 黒い艶やかな彼の髪が自分の股の間で動くのをはっきりと認め、明姫は燃えるような羞恥に包まれた。
「殿下、何をなさっているのですか!」
 思わず抗議するような口調になってしまったのは、この場合、致し方ないだろう。
「見てのとおりだ」
 ユンは彼女の足許で含み笑いすると、いきなりザラリとしたものを明姫の蜜壺に挿し入れてきた。
「あ?」
 ぬめりとした感触が蜜壺を犯し、肉筒の中を縦横無尽に這い回る。初めは何が起きているのか判らなかったけれど、次第にそれが何を意味するのか理解できた。
 ユンはあろうことか、舌で明姫の秘所を愛撫しているのだ。
「殿下、いけません。そのようなところを」
 言いかけて、明姫はあまりの快感に言葉を最後まで紡げず、腰を浮かせた。
「ああっ」
 幾度も明姫を抱いたユンは、彼女自身より明姫の身体について知り尽くしているといって良い。今も明姫の蜜壺で最も感じやすい場所に狙いを定め、幾度も執拗に攻撃を仕掛けてくる。
「あ、駄目、そこはいや―」
 明姫は半狂乱になって逃れようとするが、ユンは逞しい腕で彼女を押さえ込み、幾度も感じやすい一点を的確に責め立ててきた。これまでも似たようなことは幾度もあったけれど、所詮は指やユン自身で責め立てられたにすぎない。
 だが、今夜はユンの舌で最も敏感な場所を甘く責め立てられている。そう思うことがまたこの上なく淫らな感覚を呼び覚まし、余計に明姫を煽り、身体を燃え上がらせる。より感じやすくなった身体は甘い責め苦を立て続けに施され、呆気なく絶頂に達した。
「今夜の明姫は殊の外、愛らしかった。可愛い声で私のために何度も啼いたな」
 ユンが依然として悪戯っぽい笑みを浮かべ、明姫を覗き込む。軽く額に口づけを落とされ、明姫は恨めしげにユンを見つめた。
「殿下はいつもそう。私をそうやって苛めて、お歓びになるのですね」
「何の、可愛いそなたを苛めたりなどするものか。慕い合う男と女がこのように結ばれるのは至極自然な行為ではないのか」
 したり顔で言うユンに、明姫は溜息をついた。こんな時、彼に何を言っても、無駄なことは判っている。たとえ何をどう訴えようとも、ユンはまた次の愛撫へのきっかけにしようとするだろうから。
 こんもりと膨らんだ腹部を撫でられ、明姫は眼を見開いた。外側からの感触を感じたのか、明姫の剥き出しの腹部が波打ち、胎児が腹壁を勢いよく蹴るのが外側から見ても判る。
「ここに、私とそなたの子がいるのだな」
 ユンはまるで本物の赤児にするように、膨らんだ腹を愛おしげに撫でた。それに応えるかのように、明姫の腹が烈しく動く。中で赤児が動いているのだ。
「この子は利発だな。生まれる前から父上が判るらしい」
 と、この親馬鹿ぶりは、たとえ国王といえども余の大勢の父親と変わらないらしい。
 ユンが外から軽く叩くと、何と腹がその回数だけ上下する。二回叩くと、腹の赤児が二回蹴り返してくる。それは幾度繰り返しても同じことで、まるで今から数を知っているかのように、ユンが叩いた数だけ、胎児もまた腹壁を蹴り返してきた。
「何とこの子は天才だ。もし男なら、国王になるより真に集賢殿の学者にした方が良いかもしれない」
 生まれる前の胎児がこのような反応を見せることを、明姫は以前に書物で読んだことがある。何も天才というわけではないのだが、子どもが胎内にいるときから、我が子と意思疎通というか対話する方法として若い婦人向けの育児書にも記されていることで、特に珍しいわけではない。
 直宗は本物の学者も一目置くほどの博識家ではあるが、王といえども所詮は男だ。やはり、こういった方面の知識はあまりないようなのに、明姫は今更ながらにおかしくなった。
「殿下、腹の中の赤児は皆、このようなものだと聞いております。特にこの子が賢いというわけではありませんでしょう」
 笑いを堪えながら言うと、ユンは彼らしくもなく、むくれる。
「何を申すか。腹の中にいる赤児が皆、このようであるはずがない。この子は特に賢いのだ。もっとも、私とそなたの血を引く子であれば、賢くとも不思議はない。考えてみれば、ウンも一歳に満たぬというに、話せるほど早熟な子であったからな」
 現実は話せるといえたかどうか判らない。ただ言葉が出たのは普通の子より早かったのは事実ではあった。
 明姫の脳裏に懐かしい光景が甦る。あれは去年の夏の終わりであった。夏の暑い日の朝、ウンを連れて親子三人水入らずで庭を歩いたことがあった。庭園の片隅に薄紅色の撫子がひっそりと忘れ去られたように身を寄せ合って咲いていて、ユンがその一本を手折ってウンの小さな手に握らせてやったのだ。
―殿下、一生懸命に咲いている花を手折ったりなさってはいけません。特に子どもの前では、そのような情のないお仕打ちはお止め下さい。
 明姫は心からユンに訴えた。
―この子は幼くても、やがてはこの国を担う世子です。ウンには民を労る優しい王になって欲しいのです。
 その科白に、ユンは頭をかきながらぼやいた。
―いかにも、そなたらしい科白だな。済まぬ、今後はこのようなことはせぬゆえ、今日だけは大目に見てくれ。
 その時、ウンの小さな唇がわずかに動いた。
―アバ。
 それが、ウンが初めて喋った第一声となった。
―聞いたか、明姫。ウンが喋ったぞ! 確かにアバママと言った。
 ユンはもう踊り出しそうなほど歓んだ。
 結局、ウンはそのひと月後、帰らぬ人となった。しかし、初めて片言とも言えぬ片言を喋って以来、ユンを見れば?アバ、アババ?と繰り返した。愛らしい笑顔で?アバ?と呼ばれる度、ユンは明姫にも見せたことがない蕩けるような笑顔でウンを抱き上げ頬ずりしていた。
 恐らくウンは?父上(アバママ)?と言っているつもりだったのだろうが、まだ最後までうまく言えず、?アバ?と呼んでいたのだろう。生後十一ヶ月で亡くなったウンはとうとう?アバママ?ときちんと言えることはなく短すぎる生涯を閉じた。
 あの日に戻りたかった。今も明姫の瞼に灼きついているのは、ユンの小さな手に握りしめられていた可憐な撫子の花と、ユンの眩しい笑顔。
 この世に生まれてわずか一年足らずしか生きることはなかった幸薄い子ではあったが、ユンと明姫に―両親に数え切れないほどの想い出と歓びを残して逝ったのだ、あの子は。
 ウンが初めて寝返りを打った日、初めて這い始めた日、初めて立った日、初めてつたい歩きを始めた日。どの?初めて?も明姫に母としての歓びを噛みしめさせ、この子の母となって良かったと教えてくれた、あの日。
 五年前の温嬪と違い、明姫出産は殊の外安産だった。陣痛らしいものが来て数時間でウンは産声を上げた。それでも、第一王女のときのことがあったので、宮廷医の他にも名医と呼ばれる産科医が集められ、産気づいてからは、彼らが皆、明姫の産殿に詰めていた。
 しかし、彼らの手を煩わせるまでもなく、明姫は数回息んだだけで、すんなりとウンを産み落とした。
―王子ご誕生、元子さまのご誕生にございます。