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何度でも、あなたに恋をする~後宮悲歌~【完全版】

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 明姫は我が子を看取ることもできず、その死を知ったのは、既にウンが亡くなってからのことであった。
―何故、知らせなかったのです? 私はこの子の母なのですよ。
 いつもは穏やかで、滅多と感情を露わにしない明姫がこのときだけは泣きながら叫んだ。
―申し訳ございません。ご懐妊中の和嬪さまに万が一、病が移っては一大事ゆえ、大事を取らせていただきました。
 医師は這いつくばり、許しを請うた。明姫はもう誰の言うこともきかなかった。医師や尚宮を振り切り、ウンの小さな亡骸を抱きしめて号泣した。
―可哀想に、ウンや、淋しかったでしょう。一人で逝かせてしまって、ごめんね。
 その肩にそっと手が乗せられ、振り向いた明姫の瞳に映じたのは中殿であった。
―和嬪、そなたには申し訳ないが、世子の今わの際には私が付き添いました。そなたが身重ゆえ、世子には近づけぬと聞き、それではあまりに世子が不憫ゆえとずっと側についておったのです。ほんに御仏も酷い仕打ちをなさる。罪なき幼子を連れてゆかれるのであれば、いっそのこと役立たずの私を連れてゆけば良いものを。
―王妃さま。
 明姫は王妃の腕に飛び込み、すすり泣いた。
―そなたはどう思おうが、私は世子を我が腹を痛めた子だと思うていた。もちろん、この哀しみが生みの母であるそなたに勝るとは思うてはおらぬが、私の哀しみも察してくれ。
 中殿はすすり泣く明姫を抱きしめ、明姫の手を自分の手で包み込んだ。
―そなたには、二人目の子が宿っておる。紛れもなく国王殿下の血を引く、この国でただ一人の世継ぎだ。哀しみがあまりに深く、そなたまでもが世子の後を追うようなことになったら、殿下も嘆かれよう。辛いのは判るが、どうか気をしっかりと持ち、再び元気な子を産むと約束して欲しい。
 王妃の言葉は至極もっともといえた。ウンが自分一人の子でなかったのと同様、明姫の胎内に宿っている二人目の子もまたこの国にとっては大切な御子であり、王室にとっては必要な子なのだ。
 王妃の言葉を尽くしての優しい諭しに、明姫もまた頷くしかなかった。
 ウンの葬儀は一国の世子としてしめやかな中にも盛大に執り行われた。
―明姫、私は五年前にも第一王女を失い、今また漸く得た世子をも失った。可哀想に、二人ともに私の子として生まれてきたばかりに、長生きできぬという不幸なさだめを負うたのだろうか。
 真顔で言うユンに、明姫は何も言えなかった。
―もしや私には元気な子は授からぬのか?
 彼はすっかり気弱になっているらしかった。明姫はウンを失った直後に中殿がしてくれたように、ユンの手を両手でしっかりと包み込んだ。
―大丈夫、そんなことはありません。今度はきっと丈夫な子が生まれてきます。だから、そんな哀しいことをおっしゃらないで。お腹の子が聞けば、きっと哀しみます。
―そうだな、今度はきっと丈夫な子が生まれてこよう。
 ユンもその言葉に、気を取り直したように弱々しい笑みを浮かべたものだった。新しい生命を宿している明姫に比べて、当初はユンの方がその落胆も衝撃も大きいものだったようである。
 しかし、あれから三月経ち、ユンも少なくとも見かけだけは以前と変わらない元気を取り戻している。代わりに明姫の方は日が経つにつれて、ウンと過ごした短い日々を思い出すことが多くなっていた。
 それでも、明姫がウンを失った哀しみを何とか乗り越え、持ち堪えられたのは胎内に宿った二人目の子のお陰といえた。でなければ、自分もまた温嬪のように、我が子を失った哀しみのあまり正気を手放してしまったかもしれない。
 ユンのためにも、この国のためにも、今度こそ元気な子を産むのだという一心がこのときの明姫を辛うじて支えていたのだといえる。物想いに耽っていた明姫の耳を生暖かい吐息が掠めた。
「さて、先ほどのお仕置きだが」
 ユンの声色が俄に艶っぽくなる。
「我が妃は、どのような甘い罰をお望みかな?」
 声だけでなく、ユンの美麗な面もまた欲情の色一色に染まっている。この先に続くものに当たり前すぎるほど思い至り、明姫は胸の鼓動が速まるのを感じる。妊娠のせいで、すっかり大きさと重たさを増した乳房が更に重みを増したのは、これから彼から与えられる限りなく甘い責め苦を期待してのことに違いない。
 我ながら、あまりのはしたなさに頬を赤らめ、うつむくしかなかった。
「その様子では、何か淫らなことを考えていたな?」
 ユンは悪戯めいた微笑を滲ませ、明姫を軽々と抱き上げた。両脚をはしたなくも一杯にひろげた体勢で彼を挟むようにまたがされ、膝の上の乗せられる。
「妃の期待を裏切っては申し訳ないゆえ、せいぜい私もそれに応えるとしよう」
 身体を引き寄せられたかと思うと、耳に欲情に濡れた声が注ぎ込まれ、明姫は恥ずかしさのあまり顔が上げられない。自分が考えているすべてがユンに見透かされているようで、穴があったら身を隠したい想いだ。
「いつまでも慣れなくて、ごめんなさい」
 消え入るような声で囁く。
「恥ずかしいのか?」
 その問いに、身も世もない心地で頷いた。
「―明姫」
 そのあどけない所作に煽られたのか、ユンに再び強く抱きしめられた。そこからは彼の貪るような口づけに必死に応じている中に服を?がれ、生まれたままの姿にされてゆく。
 ただ彼から与えられる愛撫に翻弄され、声も嗄れるほど啼かされた。情熱的に求められて、啼き過ぎて声も出なくなり。
 猛々しい彼自身に貫かれて、たおやかな身体を弓なりに仰け反らせる。
「―っ!」
 一瞬、息をするのを忘れるほどの衝撃だったが、彼が胎内を満たす感覚は、何ともいえず不思議なものだった。
 感じ慣れた、この感覚。深い充足感に、明姫は我を忘れ夢中になる。息苦しいのに、気持ち良い。
 何より、彼の逞しい腕に抱きしめられる温もりは最上のものだ。
 大好きな男にこんなも求められているのかと嬉しく思うほど烈しく貪られ、食らいつくされる。
 ユンはひとしきり明姫の身体を貪り尽くした後、漸く我に返ったようである。
「大丈夫か、腹の子は?」
 気遣う問いに、頷いて見せる。遠慮などして欲しくない。思う存分、自分を貪って欲しい。
「ユン」
 誘うように彼の首に両手をかけて引き寄せると、男を誘う媚態に欲情をそそられたのか、ひとたびは躊躇いがちだったユンの行為も徐々に烈しさを増してくる。
 抱え上げられ、華奢な身体はくるりと反転させられた。そのままの体勢で彼の上に尻を落とされる。
「―深い、深いわ。ユン」
 丁度、明姫の背中がユンの逞しい胸板にぴったりと当たっている。そのような体勢を取ったのは、もうかなり膨らんでいる明姫の腹を気遣ってもあるだろう。向かい合ったままでは、正直、突き出た腹が当たり、あまり烈しい営みはできない。
 既に入念な愛撫で明姫の蜜壺は十分に潤みほころびている。腰を落としただけで、ユンの剛直が彼女の秘口に当たった。ユンが耳許で含み笑い、腰を下から突き上げる。たったそれだけで明姫の蜜壺はユンの猛り立っ切っ先をいとも容易く飲み込むのだ。
 ずぶずぶと猛々しい彼自身が明姫の花筒をおしひろげ侵入してくる。
 これ以上はないというほど深い部分で彼を受け容れさせられている。
「私の形が判るか?」