首なし殺人事件
「・・ぃ・・起きろ」
琉の声で目が覚めたのは十時を回った頃だった。
「どこだここ?」
目の前には見た事のない程大きな家が建っていた。
「永沢邸だ。」
車から降りて家を眺めている琉と同じように俺も外に出る。
門は閉まっているが噴水やら庭やらでとてつもなく金持ちノイエである事は間違いない
「誰それ?」
「元首相永沢敬一郎の息子の家だな。」
「ヘー。何でそんなところに?」
「入ってみればわかるよ。」
そう言うと琉はまた車に乗った。
「そうそう。お前は今から俺の助手ってことで。」
「詳しい説明は後でな。」
そう言うと門の前にあるチャイムを押す。
『咲嶋先生ですね!早くお屋敷の中へ。』
琉が名乗るより先に門が開いた。
チャイムの向こうの声はどこか焦っているような雰囲気だった。
門が開くと車で中に入って行く。
(大きな家だな・・お屋敷って言葉に納得・・?)
車の中から外を見ていると、どこか違和感を感じた。何だろうと考えているうちに
屋敷の玄関に着いたらしく、さきほどのインターホン越しの声と同じ声の老人がドアを開けた
「よくいらっしゃいました!ささ、中へ」
額に汗を浮かべながら、老人は琉を中へと連れて行った。
俺も琉の後へと続く。
「先生!よくいらっしゃいました。」
中には六人の男女がいた。
皆青ざめていたり、どこか不安そうな顔をしている。
「で、敬二さんはどちらに?」
「主人の寝室ですわ。」
五十代くらいの女性が後ろのドアを震える指で指しながら言う
「少し失礼。」
そう言うと、琉は奥の扉へと入って行く。
もちろん俺も着いて行く。
「なぁ?何が起こっているのかぐらい話してくれてもいいんじゃないか?」
「・・変だと思わないか?真っ暗な道を真夜中に深く帽子をかぶった女も、まだ夜中だというのに起きてすぐに電話に出た俺も」
「そう言われれば。」
確かに普通の人なら帽子なんて必要ない時間だし、
真夜中に電話にすぐに出れる人もあまりいない気がする。
「お前は俺の今携わっている事件に巻き込まれたのさ。」
「事件?」
長い廊下の一番奥の部屋に着くと琉は立ち止まり、ゆっくりとドアを開けた。
「そう、この屋敷で起こった殺人事件だよ。」
「!!」
琉の開けたドアの先にはベッドがあり、そのベッドの上に寝ている人物がいた。
しかし、彼はぴくりとも動かなかった不審に思い少し近づくと何故動かないかわかった。
その人物には首から上がなかった。