首なし殺人事件
実は俺が死体を見るのは初めてではない。
初めて見たのは高校二年の夏の事だった。
高校三年生の女子生徒が殺されたのだ、そのときの第一発見者が
俺と咲嶋 琉だった。
三年の女子生徒は自殺だろうと警察は言ったがそれに反論したのが琉だった。
元々本が好きでいろいろな事を知っていた彼は犯人や犯行動機まで当ててみせたのだ。
そんな姿を見て俺は興奮しながら
『琉!すげぇよ!お前探偵になれるよ!』
と言うといつも冷静な彼が珍しく照れながら
そう言ったのだった。
「そ、そうだ琉・・」
何故今まで忘れていたのだろう。
大学が違ったとはいえ親友の存在を忘れてしまうとは・・
彼とは成人式であった以来会っていない。
その時はお互いまだ大学生でまた遊ぼうと言っていたのに
あれから既に5年が経とうとしているのだ。
携帯はまだ止められていないはずだ。
震える手を押さえながら咲嶋の文字を探す。
(あった・・)
彼の相談したからとって解決するとは思えない。
でも、ここまで不幸になると誰かに話さずにはいられなかった。
(三コールだけ。三コールして出なかったら、警察に行こう。)
親友にまで見捨てられるならもう殺人者として
捕まるのが俺の運命なのだと考えるしかないように思えた。
『・・俊介?』
どうやら神様は俺を殺人者にはしたくないらしい。
二コール目が鳴り終わる前に琉が電話に出た。
「りゅ・・琉・・」
情けない事に親友の声を聞いた瞬間安心感からか、気づいたら泣いていた。
『どうしたんだよ。そんなに情けない声だして』
真夜中だというのに怒る訳でもなく、聞いてくる琉。
どこから説明しようかと思いながらも泣いているせいで頭の回らなくなった俺は
今までの愚痴を琉にぶつけてしまっていた。
「それで、鞄を開けたら頭が入ってて・・」
気がつくと夜も明ける時間までずっと話していた。
俺が話している間、琉は俺の話を黙って聞く。
返事をしないのは真剣に聞いているからなのだと昔教えてもらった事を思い出した。
『お前。いつのまにそんなに間抜けになったんだ。』
少しあきれたような言い方にまた涙腺が緩みそうになる。
『まぁいい。とにかくそれを持って俺のとこまで来い。そこからなら二十分も歩けば着く』
「おまえのとこって?」
全て話してすっきりしたせいか、琉まで巻き込みたくないという意識が強くなっていた。
『俺の事務所だよ。咲嶋探偵事務所。』
「は・・?探偵?」
『そう。詳しい話はこっちに着たら教えてやるからさっさと来いよ。
あと、今更巻き込みたくないとか言いだすなよ』
さすが、親友である。俺が何を考えたかお見通しらしい。
事務所への目印を言うととさっさと電話を切られてしまった。
(とにかく行ってみよう。)
行って琉に迷惑がかかるとわかったら自首すればいいだけだ。
そう考えた俺はもう持ちたくないと思っていた鞄を持つ。
さっきより重く感じる。
俺は足早に琉の探偵事務所へと向かった。