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Parasite Resort 第一章

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 アザゼルの焔拳が、銀光の鉤爪を弾いた。弾かれた鉤爪が宙を飛んでいくのに引っ張られるようにして、シュミハザははじけ飛んだ。その武装手は、溶鉱炉に投げ込まれた鉄塊のように赤熱してドクドクととろけている。

「まだだ」

 赤熱したシュミハザの手、一瞬で再生し、再び金属鉤爪となる。

「やめろシュミハザ」

 旦を置いてけぼりにして、戦闘が始まってしまった。戦闘は単調であった。襲い掛かってくるシュミハザの一撃を、アザゼルが焔剣で跳ね除ける。それの繰り返しだった。旦は、人事のようにそれを眺めながら、所在なく戦いの行く末を見守っている。

 そんな旦の視界に映る戦いの背景は、いつの間にか一変していた。輪郭はいつもの町並みなのだが、写真のネガとポジを反転させたような風合いと成り果てている景色。いつの間にか舞台は、現実世界とは違うどこかへと移っていたようだ。

「シュミハザ……お前を消滅させる動機が、私にはないのだ。分かってくれ。お前が引かなければ、私は延々と、お前の攻撃意思を弾き続ける。お前の望みが私の消滅……もしくはお前自らの消滅であるのならば、それは無限に叶うことのない希望なのだ……今は引け」

「狂おしい……狂おしいのだ……アザゼル……私との結びつきを断ち切ったお前が狂おしいのだ……どこの時空に逃れようとも、私は決してお前を諦めないぞ……」

 女は消えた。

 そして、辺の景色は、ポジとネガを反転させるように元通りとなった。旦の体を包んでいた焔もその手の焔も今はなく、そこにあるのは36.5分の平熱を持つ、一人の大学院生だけだった。


作品名:Parasite Resort 第一章 作家名:或虎