Repeated the wolrd
と、補う言葉を入れてみた途端、不思議そうに瞳を頬が当たるくらいの近くから覗いてきた・
心臓が早く鼓動を刻む。
「近いって、少しは離れてくれないから」
気づいてくれたみたいだ。
「私はどの素質があるのかな」
「じゃあ、見てやるよ」
すぐに俺はさくらのことを見た。俺にもよくわからないが昔から集中しているときは、見ている対象はステータス化されて見える。
中学の時にリンドウ、桔梗の素質を見抜いた本人だからな。
気持ちが悪い、悪魔だのよく言われたものだ。でも、人の役に立つものだから、俺は気にしていない。
見えない……何も見えず視界がぼやけるだけだった。
うっ……。
見知らぬ焼けてしまった街の景色がノイズのかかったように見えた
急に視界があやふやになってきた。
「どうしたの?」
「なんでもないよ、さくらは……」
分からない…なんでだよ。
世界が大きく揺さぶられた、またあの知らない景色見えた。
すぅと、体が軽くなったと思ったとたんに目の前が暗くなった。
そのまま俺は世界と接続を切られてしまった。
April 11th To be continued
頬に伝わる温かい感じ。
人の手?撫でられているような。
俺は目を覚ますと白い天井と泣きじゃくったって目のあたりを赤くしたさくらがいた。
「そ、大空くん、大空くん。起きてよ」
「起きてるよ」
「うわぁ!?」
「その驚き方はないだろ」
ここは、病室?
「保健室だ。君は急に倒れて担ぎこまれたのだよ」
すぐ右隣りには、保険医の日向 さおりがいた。
メガネに堅い口調のせいで周りにはあまり好かれてはいない。
例えるなら、〈氷の女王〉といったところだな。
よくお世話になるリンドウたちのような運動部に所属しているわけでもないが、助けてもらったのは今回でけでもない。
一年生の頃、同じことでリンドウに運ばれてきたようだ。覚えていないけど。
まさか二年生になって、こんなにはやく会うことになるとは思わなかった。
「先生、助けてくださってありがとうございます」
「急に畏まった挨拶とは珍しいな。でも、お礼ならその子に言いなさい」
「君を連れてきたのは、その子なんだから。今度は治療し甲斐のある人を連れてきなさい」
遠まわしに俺の傷は軽傷だったと言わんばかりの言い方だな。
先生は無言で席を外した。
「さくら、助けてくれてありがとう」
「大したことじゃないよ」
「私は、将来人を助ける仕事に就きたいからそれなりに対処法を覚えてただけだよ」
「でも、そのおかげで俺は助かったんだ。ありがとう」
「うん」
一言言ったさくらは、俺を胸に埋めるように抱きしめてきた。
さくらの鼓動が聞こえる、これが、生きるってことなんだな。
しばらくして、さくらから離れて二人とも顔を赤くして無言の時間が続いた。
ガララララ…
保健室の扉が開いた音がした。
保健室とベットを遮るためのカーテンが勢いよく開けられ、一つの影が入ってきた。
俺はよける暇もなく、衝突した。
「心配したんだからね、大空が倒れたっていうからあわててきたんだよ」
目の前には運動着の前園 優羽がいた。
「離れろ、離れろって」
「嫌よ、絶対に離れないからね」
「この体勢だと話をしにくいから、どいてくれ」
反動で振りはらった。そのまま優羽がベットから姿を消した。
「前川くん、その人誰ですか」
目が怖い。明らかに怒ってるよね。
ベットの脇から優羽が顔を出してきた。
「こいつは前川 優羽だ。芸術コースの二年だよ」
「そんなことは知っています。何度か授業でもお会いしていますから」
知ってるなら説明しなくて良かったのか
「私が聞きたいのは、そんなに密着するほどの仲なんですかということなんですけど」
「それは……」
「それは、大空くんと私は幼なじみだからですよ」
急に優羽が、割って入ってきた。
さくらの瞳から、雫がこぼれ落ちた。
「さ、さく…」
さくらは振り向かず保健室から走って出て行ってしまった。状況が分からない。そこに、何食わぬ顔で日向先生が目の前に立っていた。
「君は、バカだな」
いきなりそんなことを言われて、「先生はなんでそんなに直球をぶつえてくるんですか」と言い切る前に、日向先生が割って入ってきた。
「君にはもう少し女心を理解してもらいたいものだ。なぜ、あの状況であの子が走り去ったか、わからないのか」
「…」
「私は、さっさと追いかけなさいといってるのよ」
「!?」
「彼女の行き先くらいわかるでしょ」
「…はい」
無意識に体は動きだした。豪快に保健室のドアを開けて出て行った。
「大空くん、どこ行くの」
「ダメよ、人の恋路を邪魔したら」
「先生。止めないでください」
「まだ分からないのね」
「私にはわかりません、先生が止める理由が。」
「これから、じっくりと話しましょうね」
先生の言葉に背中を押されて走っていた。
途中、大地先生に「廊下を走るな」と声を掛けられたが、俺は振り向きもせず、丘を目指して走っていた。
制服は乱れ、呼吸は荒く、心臓が酸素を欲するよりも早く鼓動を打っていた。
足が重くなってきた。今は、そんなことは関係ない。いや、感じなかった。
やっと上りきったら、酸素を思いっきり吸収するかのように、寝転がってしまった。
うぅぅ…
泣きじゃくって、目のあたりを赤くしているさくらを見つけた。
「さくら」
名前を呼んで、立ち上がって歩き出した。
さくらは気づく様子が見えない。
「さくら」
もう一度呼ぶが聞こえない。走ってきたことで、呼吸が荒く言葉になってなかった。
だから、もう一度空に響くように俺は発した。
「さくら!!」
さくらは、涙でぐしゃぐしゃになった。顔をあげて、「大空」と呼んだ。
そばに駆け寄って、その涙をぬぐった。
「ごめん、君のことを俺は傷つけてしまった」
「いいよ、気にしてないから」
「いや、違うんだ」
「何が違うの。前川くんと優羽さんはつきあってるんじゃないの?」
「違う。俺とあいつは付き合ってない。ただの幼なじみだ」
「それなのにあんなに仲良く見せられたら、もう私が入る余地なんてないよ」
「だから、俺はあいつに行為はない」
「ホントに」
「もちろんさ、ただの腐れ縁みたいなもんだよ」
「だって、世間だと腐れ縁=幼なじみっていうよね」
「言わないって、どんな常識だよ」
まさか、桜がそんなことをいうとは思わずつい笑ってしまった。
次第にさくらの顔にも微笑みが戻ってきた。
不思議な気持ちが芽生え始めていたことに、まだ大空は気づいてはいなかった。
さくらと分かり合えて、やっと落ち着くことができる。
「私の勘違いだったんだね」
「変に、誤解させたのはこっちなんだからさ。謝ることないよ」
「そうだったね」
会話が不自然なってきた。
それぞれの過ちに気づき、絆を深めていくんだと大空は感じていた。
「あのね、お願いがあるんだけれど……いいかな?」
作品名:Repeated the wolrd 作家名:八神 航平